生まれた姿で@




ギシギシとソファが軋む響く部屋の中、いつもと全く違う鋭い目付きで私を見下ろしている彼に、私は息を飲んだ。

「気持ちいいだろ?」

耳元で囁かれたその言葉に下半身が疼き、無意識のうちに彼のモノを締め付ける。それと同時に彼が吐いた熱い吐息に身体を震わせながら、私はローテーブルの上に無造作に置かれている雑誌を眺めた。

それを見つけたのは、まだ明るい時間だった。



龍の家で彼が作ってくれたご飯を食べたり、映画を見たり、とにかくのんびりした休日を過ごしていた時、突然彼のスマホが着信を知らせた。どうやらマネージャーさんからの電話らしい。

「ちょっと電話してくるね」

そう言って部屋を移動した龍の背中を見送った後、私はテーブルの上に積まれている雑誌のうちの1冊を何の気無しに手に取って、思わず声を上げた。

「えっ?!何これ…!」

私が手にしたのは有名な女性誌だった。別に彼氏の部屋に女性誌がある事が問題なわけではない。
問題なのはその表紙と、そこに書いてある単語たち。いわゆる男女の夜の営みについての特集のようで、そういう単語がたくさん書かれている。
そして表紙の写真が…

「電話、明日の仕事のことだった…って、あれ?奈々美ちゃん何見てるの?」
「わっ!」

突然背後から声をかけられ、持っていた雑誌を足元に落とした私に龍は眉を下げながら、驚いたよねごめんね。と笑った。

「ううん。全然大丈夫…!」
「もしかして、これ読んでたの?」
「えっ?!いや、よっ、読んではない…!」

謎の背徳感から上擦った私の声に、龍は拾い上げた雑誌の表紙を眺めて再び眉を下げ、乾いた笑い声を漏らした。

「すごい特集だよね。俺も、仕事の話をもらった時は反応に困ったよ…」
「そう、だよね…」

私が反応に困ったのは特集の方じゃなくて、表紙になっている際どい写真の方だと言ったら、龍はどう思うんだろう。



彼、十龍之介がアイドルとして活躍している事は勿論知っている。
しかし、アイドルに興味がない私は、彼の仕事についてあまり知らなかった。『アイドル=歌って踊る』そのレベルの認識だった私は、こんな仕事もしてるの?!と驚いてしまったのだ。

龍と私は恋人であり幼馴染。だから龍のことは私が世界で一番知ってる!なんて思っていたけれど、どうやら違ったらしい。

「あ!そういえばこの前スタッフさんにもらったお菓子、奈々美ちゃんと食べようと思って取っておいたんだ。持ってくるね」
「え、あっ、ありがとう!」

ローテーブルの上に雑誌を置いてキッチンに向かった龍。その間、私の目線は雑誌の表紙に釘付けになっていた。
こんなに際どい写真が表紙なら、中にはどんな写真が載ってるんだろう…。気になってしまった私は、再び雑誌へと手を伸ばした。

「うわぁ…」

ページを捲って目に飛び込んできたのは、思わず声を漏らしてしまうほどの写真たち。見たことがない龍の表情や鍛え上げられた身体に、顔が熱くなっていくのがわかる。

「筋肉すごい…」

今まで龍とそういう行為をしたことが無いわけではない。でも、龍はいつも電気を消して布団を被って、極力お互いの身体が見えないようにと気を使ってくれる。だから大人になった龍の身体をちゃんと見るのはこれが初めてだった。

「え、えっちだ…」
「なにが?」

背後からかけられた声に肩を跳ねさせながら振り返れば、そこに居るのは他でも無い龍で、彼は私の手にしている雑誌へと目を落として、困ったような笑みを浮かべた。

「奈々美ちゃんに見られると、ちょっと恥ずかしいな」
「なっ、なんか、すごい写真ばっかりで、その、びっくりしちゃった」
「お菓子、持ってきたから食べよ」
「うん。ありがとう」

お礼を言いつつも、私は雑誌の中の龍から目が離せない。髪をかき上げながらシャワーを浴びている写真や、ベッドの上に横になり挑発的な表情を浮かべている写真。どの写真も本当に際どいところまで写っていて、この写真を私以外の女の人も見てるのかと思ったら、ほんの少し心の中がもやっとした。

「うん、すごく美味しい!ほら、奈々美ちゃんも食べよう?」
「うん」
「奈々美ちゃんの好きな味もあるよ」
「うん」

適当に相槌を打ちながら、私は雑誌を読み進める。読み進めると言っても、写真しか見ていないのだけれど。

「…奈々美ちゃん、そんなにその雑誌気に入ったの?」
「うん。えっ?いや、別にそういうわけじゃ…!龍って、こんな表情もするんだなって思ってただけで…!」

龍の言葉に驚いて顔を上げたと同時に、手にしていた雑誌を取り上げられた。そして間髪入れずに唇を塞がれ、肩を押された私はソファに倒れ込む。

「んっ…龍っ、いきなり何…!?んっ…はぁ…ちょっ!」

触れるだけのキスを繰り返す龍に抵抗するべく顔を背ければ、今度は首筋にざらっとした感覚。そして数秒後にピリッと小さな痛みが走った。

「…本物が目の前にいるのに、奈々美ちゃんには雑誌の中の俺の方が魅力的なのかな」
「そんなこと…」
「あるよね」

そう言って私を見下ろしている龍の表情は、いつもの優しくて柔らかいものじゃなかった。目つきは鋭く、それでいてギラついている。

「…龍、なんか怒ってる?」
「ん?怒ってないよ。ただ、奈々美ちゃんは"仕事用の俺"の方が好きみたいだから、妬いたんだ」
「えっ?!別にそういうわけじゃ…!」
「嘘はダメだよ。雑誌の中の俺の身体に、表情に見惚れてただろ?」

そう言って上体を起こし、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた龍の身体に、心臓が大きな音を立てて顔が熱くなる。

「見たいなら、いつでも見せてあげるのに」

私に覆い被さって耳元で囁いた龍の声は、聞き慣れた優しい声じゃなくて、湿度を含んだ聞いたの事のない声だった。

「嫉妬の相手が自分だなんて、おかしな話だよね」
「りゅっ、龍ちょっと待って…!」
「待てない」

直後、耳に響いたキスの音と、水音。そして、龍の吐息に身体が震えた。
腰を撫でる龍の手を両手で掴んで再び、ちょっと待って!と声を上げても、一向に止まらない彼の手に焦りはじめる。

「龍、本当に待ってってば…!」
「待てないって、言っただろ?」

どこでスイッチが入ったのか、私の太ももに押し付けられた龍のモノは、もう硬くなり始めていて、私は息を呑むことしかできなかった。



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