これで許してね
バタバタと部屋を駆け回る足音で目が覚めた。
ぼーっとする頭でベッドから降りてリビングへ向かえば、あれー?と言いながら忙しなく動き回っている彼女の姿。
「おはよう」
「おはよ!ねえ、ピアスどっか行っちゃったんだけど、見てない?」
「ピアス…?」
ふと、ベッド脇のサイドテーブルに目をやれば、そこには奈々美が探しているであろうピアスが。それを手にして彼女の元へと足を向ければ、その表情はぱっと明るくなった。
「これ?」
「そう!ありがとう!どこにあった?」
「あっちのサイドテーブル。昨日する前に外してただろ?」
「…そうでしたね」
明るくなった表情はどこへやら、奈々美は唇を尖らせて、ぶっきらぼうに僕の手からピアスを引ったくった。それが照れ隠しなんだという事は、ほんのり赤い頬を見ればすぐにわかる。
「照れてる」
「照れてない」
「昨日の夜のこと思い出した?」
「そんなんじゃないってば!」
もー!と言いながらそっぽを向いた彼女の首筋に鬱血痕を見つけて、僕は思わず、あっ。と声を漏らす。
「ねぇ」
「やばいっ!もうこんな時間!ごめん、もう行かなきゃ!」
「あのさ」
「話、帰ってきてから聞くから!本当ごめん!」
じゃあね!と慌ただしく家を後にした奈々美は、きっと夜、怒って帰ってくるだろう。
『見えるところには絶対つけないで!』
と言われても僕だって男なわけで、彼女が自分のものだという印を衝動的につけたくなる事だってある。久々に体を重ねた昨晩がまさにそうだった。
でも確か、以前同じ事をした時は確か、1週間口を聞いてもらえなかったような気がする。
「…ケーキでも買ってくるか」
1個じゃ足りないだろうな。いっそのことホールにするか。そんな事を考えながら、僕は出かける準備を始めたのだった。
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