選ぶまでも無く
田中と鈴木に連れられてやってきたのは駅前のファストフード店。目の前で腕を組んでいる2人を尻目に、オレはハンバーガーに齧り付く。すると眉を吊り上げた鈴木の怒声が飛んできた。
「おい!春原!呑気にハンバーガー食ってんなよ!」
「そうだぞ!取り調べ中だぞ!」
「いや、その取り調べって何?!オレ何もしてないんだけど?!」
っていうか、冷めちゃうよ。と、2人のトレーからポテトを1本ずつつまみ食いすれば、すかさず飛んでくる野次。それを右から左に受け流して、オレは再び口を動かした。
「で、実際のところどうなんだよ」
「何が?」
「佐藤さんと片瀬さん、実際どっちと付き合ってんの?って話!」
「いやいや!どっちとも付き合って無いってば!」
否定の意を込めて顔の前でブンブンと手を振るも、2人は疑念の表情を浮かべている。
「本当かぁ〜?」
「本当だって!」
「ふーん。まあ、それが真実だとしてだ。春原は片瀬さんと佐藤さんどっちの方がかわいいと思う?」
「え?」
「ちなみに俺は佐藤さん!なんつーか、守ってあげたくなる的な?」
「田中、それ入学してからずっと言ってるよなぁ。俺は片瀬さん派。顔だけじゃ無くてスタイルもいいし!で、春原は?」
ニヤニヤしながら問いかけてくる2人を前に、頭の中にぱっと浮かんできた女の子の名前を口にしようとしてやめた。ここで名前を出してしまったら面倒な事になりそうだ。
「……別に、どっち派とか無いよ。2人ともかわいいじゃん!」
「は〜?聞きました?鈴木さん」
「聞きましたよ田中さん」
「どっち派とか無いよ。2人ともかわいいじゃん!ですって!」
「ね〜!」
2人の話し方に、気持ち悪……。と呟けば、くしゃくしゃに丸められた紙ナプキンが勢いよく飛んでくる。
「うるせー!2人もかわいいなんて、そんなのわかってんだよ!」
「それ前提でどっち派かって話だろうが!これだからモテる男は!」
「ちょっ、ゴミ投げないでよ!」
「問答無用!お前なんかハンバーガー食いすぎて太ってしまえ!」
ぎゃーぎゃーと騒いでいる2人を、他の人の迷惑になるからとなんとか落ち着かせて、オレはふうと深いため息を吐いた。
「あーあー。俺も春原みたいにモテモテになりてえ〜!モテモテになって彼女欲しい〜!」
「わかるわ〜!俺も佐藤さんみたいな彼女欲しい〜!」
「な〜!でもさ、実際問題佐藤さんはともかく、片瀬さんと付き合うとか現実的じゃねえよなあ」
「それな〜」
「現実的じゃない……?」
その言葉に首を傾げれば、2人は顔を見合わせてやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「だってよ、あの子芸能人だぜ?」
「同じ学校通えてるだけで奇跡っしょ」
「そうそう」
「つーか、片瀬さんってなんでうちの学校居るんだろうな?うちも融通効く方なんだろうけど、芸能活動もっと楽にできる学校もあんだろ」
2人の言う通り、あんなに本格的に芸能活動をしてる片瀬さんが、何でうちの学校に通ってるのか実は前々から気になってはいた。
今度聞いてみよう。なんて、オレの呟きを2人が聞き逃すはずもなくて、マウント取ってんじゃねえぞ! なんて騒ぎ始めた彼らを無視して、オレはここには居ない片瀬さんに想いを馳せるのだった。
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