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「え?ライブ?」
「そう!招待してたプロデューサーが来られなくなっちゃったらしくて、招待席が空いちゃうんだよね。だからもしよかったら」
「行きません」
夜、モモちゃんと2人ベッドの上でごろごろしている最中、そうだ! と突然振られたのは、Re:valeのライブのお誘い。私はそのお誘いを最後まで聞かずにお断りした。
「ですよねー……」
「Re:valeが招待するべき人は他に山ほど居るでしょう?」
「ん〜、そうなんだけどさぁ……」
「それに何度も共演してるとは言っても、私が招待席に居るのおかしいし」
「そうだけどー!!招待でもしないと奈々美はライブに来てくれないじゃんか!」
ぷくっと膨らんだモモちゃんのほっぺを指でつつけば、ぷすっ。と空気が抜ける音が聞こえ、どちらからともなく2人でくすくす笑い合う。そして、お返し! と、モモちゃんの指が私のほっぺをつついた。
「奈々美のほっぺって本当柔らかいよね」
「モモちゃんは私のほっぺ好きだよね」
「好き!ほっぺだけじゃなくて全部好き!……って!違う違う!危うく流されるところだった!」
力一杯私を抱きしめたモモちゃんは、もー! と言いながら私の頭を抱え込むように回した手で再び私のほっぺをつつく。
「なんでいつもライブ来てくれないのさ!」
「ふふっ、モモちゃんくすぐったい」
「ちゃんと答えるまでやめてあげないぞ!」
そう言って私のほっぺをつつき続けるモモちゃん。モモちゃんにぎゅてされるのも、ほっぺを触られるのも好きだから私はずっとこのままでもいいけど、モモちゃんが拗ねたままなのは嫌だな。そう思って、私はモモちゃんにずっと秘密にしていた話をすることにした。
「ねえ、モモちゃん」
「何さ」
「私ね、実は今度のライブ行くんだよ」
「えっ!?」
ばっ! と音が聞こえてきそうなほどの勢いで私から離れたモモちゃんは、さっきまでと打って変わって目をキラキラと輝かせていた。
「それって招待受けてくれるってこと?!」
「ううん。招待は受けない。行くの。もう決まってるの」
「ん?!どう言うこと?」
頭にハテナを飛ばしているモモちゃんを尻目に枕元に置いていたスマホを操作して、出てきた画面をドヤ顔でモモちゃん見せる。
「自分でチケット取りました!」
「えっ!?!?ちょっ、本当にどう言うこと!?」
私の手からスマホを奪い取り、目を凝らして画面を見つめるモモちゃん。そのあまりの驚きように思わず笑みが溢れる。チケットの券面をしっかりと確認して状況を理解したモモちゃんは、口をへの字に曲げて今度は私に覆い被さって脱力した。
「うっ、モモちゃん……私潰れちゃいそう」
「こっそりチケット取ってたの、オレに黙ってた罰だよ!!」
「きゃー!重いー!」
「なんだとー!?」
そんなやりとりをして2人でひとしきり笑った後、隣にごろんと寝転んだモモちゃんに向き直る。さっきまでへの字に曲がっていたモモちゃんの口元は緩んでいた。
「奈々美、来てくれるのか〜……」
「秘密にしててごめんね?モモちゃんをびっくりさせたかったの」
「いや、もう、めちゃくちゃびっくりしたよ!」
「ふふっ、じゃあサプライズ大成功?」
「わっ!悪い子だ!と言うか、自分で取らなくても、言ってくれれば最初から席用意したのに!」
「それじゃダメなの!モモちゃんだってファンの気持ちわかるでしょ?」
「わかる」
かつて自分がRe:valeのファンだった頃の事を思い出したのか、真顔で即答したモモちゃん。そして安心したように深い息を吐いて、今度は私を優しく抱きしめてくれた。
「あー、本当、奈々美に観てもらえるのめちゃくちゃ嬉しいなあ」
「あとは当日お仕事が入らない事を祈るだけです」
「ゆう子ちゃんに言ってないの!?」
ぎょっとした表情で私の顔を見たモモちゃんに、慌てて首を首を振る。
「言ってる言ってる!というか、一緒に行くよ!1人で行くつもりだったけど、1人じゃダメって言われちゃった」
「そりゃそうでしょ!席は?どの辺?」
「まだわからないみたい。わかっても教えない!」
「えっ!!なんで!!」
「モモちゃんの彼女としてではなく、いちRe:valeファンとして行くので」
「……それって、ユキ推しで行くってこと?」
「……黙秘します!」
「なっ!それもう答え言ってるようなもんじゃんか!浮気者っ!」
「ええっ!?浮気じゃないよ!」
「浮気する悪い子にはこうしてやるー!」
そう言って私の頬をつまんだかと思えば、そのままキスをしたモモちゃんは、驚いている私を他所にしてやったりと笑みを浮かべていた。
「今キスするタイミングだった……?」
突然の事すぎてなんだか恥ずかしくて、尻すぼみにそう尋ねる。
「奈々美がオレの事しか見られなくなるように、いっぱいドキドキしてもらおうと思って!」
「……それとこれとは話が違うと思います」
「うん。ただキスしたかっただけ」
もう一回いい? と私の返事を聞くより先に再びキスをしたモモちゃん。私はそれをただ受け止めながら、最初からモモちゃんの事しか見てないのに。という言葉を飲み込んで、先日購入したピンクの服のコーディネートを頭の片隅で考えるのだった。
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