午後一時




 スケジュールを確認してため息を吐いた。何が何でも会いに行く。奈々美ちゃんにそう言ったはずなのに、どうにも丁度いい時間のスケジュールが空けられそうにない。無理はしないでと言ってくれた彼女のその言葉は間違いなく本心だけれど、別の言葉が、気持ちが、隠れていないはずがなかった。

 最後に会ったのは新年、一緒に初詣に行った時だった。そこから立て続けに入った出張で、彼女とは1ヶ月以上会えない日々が続いている。記念日も祝えなかった。だから、寂しいと思っているのは俺だけじゃないはずだ。

「この時間なら少し……いや、でも移動時間を考えると、厳しいかな……」

 再びため息を吐いて、デスクの上のチョコレートの箱の山に目を向ける。それから、彼女に渡すために自分で用意したチョコレートのことを思い出す。今日会うつもりで持ってきたそれを渡すためだけに会うのも悪くないかもしれない。そもそも、前々から会えないと言っていたのに急に会いたいと言い出したのは俺だ。地図アプリで目的地までの経由地に彼女の家を入れてルートを検索する。うん。なんとかいけそうだ。

──今日、18時半くらいに会いに行ってもいい?

 善は急げ。連絡を待ってくれている彼女に急いでLIMEを送って返事を待つ。なかなか既読にならないけれど、彼女も仕事中だろうから仕方がない。

 少しでも彼女との時間を作れるようにと仕事を進めていると、スマホがPCの画面に通知が表示される。数行だけ見えた内容に思わず、えっ。と間の抜けた声を漏らした。

──15時くらいから下のカフェで仕事する予定だから、いつでも大丈夫だよ!

 彼女の言う下のカフェと言うのは、おそらく俺の会社が入っているビルに併殺されているカフェだ。何度かランチをしにこの地を訪れて、彼女はお気に入りを見つけたらしい。この前も休日一人でお茶をしてきたと言っていた。

 今すぐ会いたい気持ちをぐっと抑えて、わかった。ありがとう。と端的に返信を返す。そして再び少しでも長く彼女と居られるようにと手を動かし始めた。その手はさっきよりも、ほんの少し軽い気がした。



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