プレゼント交換
「「メリークリスマース!!」」
パーンとクラッカーを鳴らすモモと奈々美ちゃん。
今日は12月25日。2人が開くささやかなクリスマスパーティーにお呼ばれした僕と万は、着いて早々、クラッカーから飛び出た紙テープを頭に被る、という洗礼を受けていた。
中身が出ないタイプのクラッカーを使う予定だったのだろう。勢いよく噴射した紙テープに、あれ?!と2人は慌て始めた。
「すすす、すみません!」
「音だけのつもりだったんだよ…!」
「そんなに慌てなくて大丈夫だよ、2人とも」
そう笑いながら言う万に、2人は瞳を輝かせながら、バンさん…!万理さん…!と感嘆の声を上げている。
そう、何を隠そう奈々美ちゃんも、かつてのRe:vale…つまり、僕と万の熱烈なファンなのだ。それもモモに引けを取らないほどの。
「気を取り直して、メリークリスマス!ささ、あがってあがって!」
「ご飯も頑張って作ったので、たくさん食べてください!」
「ありがとう」
「お邪魔します」
モモに腕を引かれながらリビングへと足を進める万に対し、履いてきた編み上げブーツを脱ぐのに手こずり、遅れをとった僕。
そこに、ユキさんユキさん!と、奈々美ちゃんが駆け寄ってきた。そして、こちらつまらないものですが。とお辞儀をしながらプレゼントをくれたが、え?今?と思わず口に出してしまった。
「ふふっ、誕生日の方です」
「え、あ、そっちね。ありがとう」
「はい!2人には秘密ですよ?」
自身の口元に人差し指を添えながらそう言う彼女は、隠し事をしている子どものように楽しそうに笑っていて、なんだか可愛らしくて思わず頭を撫でた。すると、僕たちの様子を見に来たモモが、あー!!!と声を上げながら、僕と奈々美ちゃんの間に割って入る。
「ユキそれはダメ!奈々美の頭撫でていいのはモモちゃんだけ!ん〜!!でも奈々美もズルい!オレもユキに頭撫でられたい!!」
どっちにやきもちを焼いてるのかわからない反応をしてきたので、これでいい?と言いながらモモの頭を撫でといた。
奈々美ちゃんの手料理に舌鼓を打ち、お酒もだいぶ進んだ頃、そろそろプレゼント交換しようよ!とモモが声をあげた。
「音楽はどうしようかね」
「僕と万が歌おうか?」
「「それは死んじゃう…!」」
でも聴きたい…!と言うので、僕と万で赤鼻のトナカイスペシャルバージョンを歌ってあげた。
2人とも最初はリズムに合わせてプレゼントを回していたが、そのうち歌っている僕と万を輝いた目で見たまま、プレゼントを回す手が止まってしまった。その後プレゼントは回ることなく歌い終わり、2人は拍手をしながら、最高のプレゼントだ!録音しておけばよかった!と、騒ぎ出した。
そんな2人を放置して、プレゼント交換って、確か音楽が止まった時に持ってるプレゼントがその人の物になるんだっけ。と、手元のプレゼントを見ると、まさかの自分のプレゼントがあった。
時計回りに回していたから、当然みんなも自分のプレゼントを持ってる。
「もう一曲歌う?」
という万の提案に、流石に次は命がない!と2人がまた騒ぎ始めたので、結局左隣の人に渡す事になった。
「わー!ユキさんからのプレゼント…!」
僕からのプレゼントを手に感動している奈々美ちゃんに、思わず笑みが溢れるが、早速開けようとする彼女に待ったをかける。
「待って、奈々美ちゃん。それ、僕たちが帰ってから、モモと2人で開けてほしいんだけど」
「帰ってからですか…?でも、折角だからみんなのプレゼント、見せ合いっこしませんか?」
そう、ワクワクとしながら言う奈々美ちゃんの誘いを断るのも憚られる。
じゃあ、奈々美ちゃんのは最後にしようか。と、他の2人にプレゼントを開けるように促すと、察しのいい万は何か言いたそうに僕を見ていた。
「お前もしかして…」
「ん?何?」
「いや、なんでもない」
そう言いながらバンは、モモからもらったプレゼントを開け始めた。中身は案の定、モモが大好きなももりんこと、桃とりんごのスパークリングだった。
「ありがとう、百くん」
「もしジュースとして飲むのアレだったら、お酒割るのに使ってください!よし、じゃあモモちゃんのも開けるよー!」
そう言いながらモモが開けた万からのプレゼントは、使い古されたピックとCDだった。
「ごめんね、時間なくて買いに行けなくて…。俺が昔使ってたピックと、デモCDなんだけど、2人になら喜んでもらえるかな?って」
「ちょっと待って、僕に当たってたらだうするつもりだったの?」
「奪い返して2人にあげるつもりだった」
僕と万が2人で話していると、2人のリアクションが無いことに気付いた。やっぱり嬉しくなかったんじゃん。と、モモと奈々美ちゃんに顔を向けると、2人は声にならない声を抑えるように口に手を当てながら、目を輝かせていた。
「バンさん、最高…一生の宝物にする…」
「あぁ…いいなぁ…モモちゃん、あとでじっくり見せて…」
そんな2人の様子に宗教じみたものを感じながら、僕は奈々美ちゃんからのプレゼントを開けた。
中身はバスボムやホットアイマスクなどの癒し用品で、話に聞くと彼女の愛用のものをセットにしてくれたらしい。
「すみません。男の人にあげるプレゼントって、全然わかんなくて…」
「そんな。万のが当たるより100倍嬉しいよ、ありがとう」
「おい」
「いやいやいや!万理さんのプレゼントに比べたら私のなんて!!そんな!」
すみません!と、土下座しそうな勢いの奈々美ちゃんに、モモが、奈々美のプレゼントも開けようよ!と、声をかける。そうだね。とプレゼントを開けようと、奈々美ちゃんが包装紙に手をかけたところで、僕はわざとらしく、あ。と呟く。
「もうこんな時間だ。明日も早いから帰らないと」
「え?明日、午後入りじゃなかったっけ?」
「そうだっけ?それにほら、万も明日早いって言ってたよね?」
ほら、帰るよ。と、目で合図すれば、万は何も言わずに、やれやれといった感じで帰り自宅を始めた。
「えぇ…、もう帰っちゃうんですか?」
「うん、片付けもしないでごめんね…。ごちそうさま」
「美味しかったよ」
「よかったです、また来てくださいね!」
「気を付けてね〜!」
そう言いながら玄関まで見送ってくれる2人に手を振りながら、僕と万はモモの家を後にした。
「おまえ、もう少し奈々美ちゃんに気を使ったプレゼント用意しろよ…」
万は車の中で、はぁ。とため息をつきながら僕にそう告げた。
「え?最大限に気を使ってるじゃない。モモに当たっても、奈々美ちゃんに当たっても、2人で使えるものにしたつもりだけど」
「…それこそ、俺に当たってたらどうしたんだよ」
「奪い返して2人にあげてたね」
そう言うと万は、奈々美ちゃんかわいそうに…。と呟いた。そんな万の呟きをBGMに、僕はモモにラビチャを入れる。
-それ、僕のお気に入り。感想待ってるからね。
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「あれ、ユキからラビチャだ」
「え?なんだって?何か忘れ物?」
「んっと。それ、僕のお気に入り。感想待ってるからね……?待って奈々美、プレゼント貸して?」
えー…と、言ってユキからのプレゼントを抱きしめて離さない奈々美。
ユキからのラビチャに嫌な予感がして、なんとしても奈々美より先に中身を確認したかったオレは、断腸の思いでバンさんからのプレゼントと交換!という条件をつけて、ユキからのプレゼントを受け取り、奈々美に見えないようにこっそりと中身を確認し、固まった。
「ユキさんからのプレゼント、なんだった?」
後ろから覗き込んできた奈々美に、大したもんじゃなかった!!と、告げ、それよりバンさんのプレゼントすごいよね?!と無理やり話題を変えて、なんとかその場をやり過ごした。
その後オレは、ユキからもらったプレゼント、もとい小さな正方形の袋達を、ベッドのヘッドボードの引き出しと、財布の中に分けて入れられながら、シャワーを浴びている奈々美が出てくるのを、今か今かと待つハメになったのだった。
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