俺は別に好きじゃない!




「御堂さんって、いつも決まった時間に携帯を見てますよね」

ある日、音楽番組収録後に楽屋で帰り支度をしながら、ラーメンでも食べて帰るか。と、話ていた俺達。すると、そう言えば。と、巳波から突然の質問が飛んできた。それに対し、たしかに俺も気になってた。と続くトウマと、興味がなさそうに、ふーん。と、早々に支度を終えて、ゲームをしている悠。

「何かルーティンがあるんですか?」
「いや、別にそういう訳じゃない」
「どなたかに連絡してるとか?」
「まぁ、そんなとこだな」
「へぇ…女性ですか?」

珍しく質問攻めしてくるなと思えば、巳波は疑問形にしながらも、確信めいた声色でそう言い放った。思わず返事につっかえると、マジかよ?!とトウマが騒ぎ出し、ゲームをしていた悠もこの話題には興味があるようで、じっとこちらを見ている。
もうここまできたら隠してる必要もないか。と思い、そうだ。と答える俺に3人は呆れ顔になった。

「やっぱり…。そういうの、やめたんじゃなかったんですか?」
「虎於って本当女好きだよね。無節操で引く」
「スキャンダルだけは気を付けてくれよ?」

口々にそう言う3人に、ちょっと待てよ。と声をかければ、巳波と悠は、何か反論でも?という表情で一斉に俺を見る。
巳波の言う"そういうの"とは、言わずもがな女遊びの事で、ちょっと前ならともかく、今は一切していない。(自分から寄ってくる女は別だが)
しかしその、ちょっと前のイメージが強すぎたのだろう。未だに女性スタッフや共演者と話していると、3人からは監視されているような、鋭い視線が飛んでくる。しょうがない、腹を括るか。と、口を開こうとしたタイミングで、巳波が再び質問をしてくる。

「それで?今回はどんな女性なんですか?」
「あー、いや…。お前らに隠してたが、その…」
「何さ」
「いや…あの」
「御堂さんにしては、珍しくはっきりしないですね」
「まぁまぁ、2人とも聞いてやろうぜ?」

それで?と、俺を促すトウマ。いざ言うとなるとなんだか躊躇われるが、ここまで言ったんだ、やっぱりなんでもないは通用しないだろう。もう一思いに言うしかないな。

「俺、許嫁がいるんだ」
「へー。…って許嫁ぇ?!」
「…許嫁いる人とか、初めて見た」
「御堂さんの許嫁なんて…。相手の方がかわいそうですね」

どう言う意味だ?と言えば、浮気とか不倫とか普通にしそうじゃないですか。と、返されてぐうの音も出なかった。

「え、じゃあ何だ?!今まで許嫁が居るのに女遊びしてたのか?!」
「うわ、虎於最低」
「男の風上にも置けませんね」

口々に俺への非難を浴びせる3人に、だから言いたくなかったんだ…。と、ため息を吐く。
そして、相手がかなり鈍臭い女で、決まった時間にどこで何をしてるか念のため確認している事、仕事が終わって帰る時は毎回連絡している事など、いつもしてるラビチャの内容を軽く話す。


「まぁ、許嫁と言っても親が決めた相手だしな。鈍臭いから気になるだけで、俺は別にあいつのことは好きじゃ…」

俺の話を遮るように、携帯が着信を知らせる。相手は奈々美、今話題に出ていた俺の許嫁だ。
まぁもう3人に隠す必要もないし、別に部屋を変えなくてもいいか。と、その場で電話に出る。

「もしもし?」
『もしもし、トラくん?お仕事お疲れ様』
「あぁ、ありがとう。それで?どうしたんだ?」
『えっとね、今トラくんのお家に向かってるんだけど…へっしゅ!』
「おい、風邪か?」
『え?ううん。ちょっと寒かっただけ…』
「寒いって…もしかして、歩きなのか?1人で?いつもの運転手はどうしたんだ?」
『今日はお父様とお母様が別のパーティーに出席するから、それぞれに着いて行ってるの』
「それなら俺が迎えに行ったのに。夜道を1人で歩くなんて、何かあったらどうするんだ。おまえ、鈍臭いんだから気を付けないと、変なやつに連れてかれるぞ?」
『ふふっ、大丈夫だよ人通りも多いし…あっ、すみません』
「おい、今人に当たられたのか?どんなやつだ?」
『私がよそ見して当たっちゃっただけ、大丈夫だよ。それより、トラくん今日何か食べたいものある?』
「食べたいもの…?おい、まさか料理する気か?」
『うん。料理くらいちゃんとできるようにならなきゃって、最近勉強してるの。それでね、うちのシェフにだいぶ上達したって言われたから、トラくんに食べてもらいたくて』
「いつもはシェフと一緒なんだろ?1人で料理なんて、指切ったらどうすんだ?火傷だって危ないだろ?」
『えー?大丈夫だよ、トラくんは心配性だね』
「別にそんなんじゃ…。わかった。俺も今すぐ帰るから、一緒にやる。絶対に1人で始めるなよ?じゃあな」


そう言って電話を切り、急いで身支度を整えて荷物を持つ。そして3人に、やっぱり俺今日はもう帰るわ、お疲れ。と言い残し、足早に楽屋を出たのだった。





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「え、そこに居たの、トラ…だよな…?」
「それ以外誰がいるっての?…いや、でもトウマが言いたいこともわかる。何あの声と表情、優しすぎて気色悪かったんだけど」
「別の意味で、相手の方がかわいそうですね…」
「ってか虎於、俺は別に好きじゃない。的な事言おうとしてなかった?」
「鈍臭いから気になるだけ…って、言ってたな」
「えぇ。どの口が言うんでしょうね」




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