初顔合わせ




「本日よりヘアメイクを担当させていただきます、片瀬 奈々美です」

よろしくお願いします。という声とともに下げられた頭。一つに束ねられたふわふわの髪が揺れる。やっぱ、運命だ。なんて小さな声が頭上から聴こえて不思議に思い視線を動かすと、そこには王様プリンの蓋を開ける前みたいに、わくわくした表情の環がいた。
いつも顔合わせの時は脱力してるのに、珍しいな。なんて思っていると、マネージャーが一織から順番にメンバーを紹介し始めた。環はずっとそわそわしていて、今か今かと自分の番を待っているみたいだ。すぐに俺の番が来て、軽く挨拶をする。

「和泉三月です。うちの連中賑やかすぎる時があるけど、その時は厳しくしていいからな!」

なんかあったら俺の事呼んでくれよな。と一言添えれば、頼りにしてます。なんて言われて、ちょっと嬉しかった。
さぁ、お待ちかね環の番だぞ。なんて思うや否やマネージャーの紹介も待たずに、環は挨拶を始めた。

「四葉環です!よろしくお願いします!あ、のさっ、俺…!」
「はい、タマ、ストーップ。時間もあんまないし、マネージャー次いっちゃって」

前のめりになりながら、片瀬さんに何か話しかけようとする環を、大和さんがすかさず止める。
そういえば、先日の雑誌撮影の時に"片瀬さんが環に気があるのでは?"という話題があがって、なるべく2人の接触を控えるように立ち回ろう。と決めたことを思い出した。
予め相談してたのもあって、マネージャーもすぐに察したようで、そうですね。と言い、壮五の紹介に進んだ。

ちらっと環を見上げると、さっきとは打って変わって、拗ねたような表情をしていた。そして、俺の服の裾を引っ張りながら、大和さんをじと目で見ている。

「ヤマさん今、俺にいじわるした。俺だって喋りたかったのに」

みっきーそう思うよな?という突然の問いに、いじわるではないんじゃないか?と返せば、みっきーもヤマさん派かよ!と、さらに拗ねてしまった。




「では、早速メイクに入りましょうか。コーナー進行の確認もあるので、大和さんと三月さんとナギさんからお願いします!その後は終わり次第お呼びしますので、皆さん楽屋で待機していてください」

全員の紹介が終わり、マネージャーの声でみんな移動を始める。
すかさず片瀬さんの元に向かおうとする環を、一織が楽屋へと引っ張って行くのが見えた。

「なぁ、大和さん。環の様子なんか変じゃないか?」
「ん?あー、この前言ったこと気にしてんのかもな。さっきは変な事言いださないかヒヤっとしたわ」
「タマキは、ナナミと仲良くなりたいのでは?ワタシもナナミと仲良くなりたいです!」

そう言えばナギはあの話知らないんだよな。なんて思いながら、俺たちはメイク室へ向かう。メイク室には片瀬さんとオサムさんと、前からお世話になってるヘアメイクさんが居た。
ちなみに、辞めてしまったもう1人のヘアメイクさんは旦那さんと大喧嘩して子どもを連れて実家に帰ったらしい。今時そんな事あるんだ?!なんてみんなで雑談しながら席に着く。

俺の担当はまさかの片瀬さんで、ちょっと緊張だ。

「よろしくお願いします。メイクから入りますね」
「あぁ、よろしく!」

早速メイクに取り掛かる片瀬さん。
近くで見ると整った顔してんな。とか、肌綺麗だな。なんて観察していたら、バチっと目が合い、とたんに気まずくなる。

「あっ、と、……そうだ!片瀬さんって、いくつぐらい?俺と同じくらいかなって思ってんだけど」
「Oh!ミツキ、女性に年齢を聞くなんてナンセンスです!デリカシーがありません」
「なっ!」
「ふふっ、大丈夫ですよ」

とっさに出たのは年齢の話で、ナギからデリカシーが無いと言われ、やっちまったか?!なんて思ったが、片瀬さんは小さく笑いながら、今21です。と答えてくれた。気分を害さないでよかった。という安心感と、やっぱり同い年だった!という喜びで、少しテンションがあがる。それからはお互いの好きなものの話などで盛り上がり、あっという間にメイクとヘアセットが終わった。

「お疲れ様でした。気になるところ無いですか?」
「うん、ばっちりだよ、ありがとな!じゃあ俺、次呼んでくるけど…大和さん達ももう終わるなら、もう4人まとめて連れてきちゃっていいですか?」

ヘアセット中のオサムさん達からの、オッケー!の返事を確認し、俺はメイク室を後にする。そういえば、片瀬さん王様プリンが好きって言ってたけど、うちの王様プリン好きの末っ子は今どうしてるだろうか。機嫌治ってるといいんだけど。なんて思いながら、楽屋へと向かった。



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