再会
ミツがメイク室を後にしてすぐ、俺とナギもメイクが終わった。打ち合わせに向かおうと席を立つと同時に、よろしくお願いします!とリク達4人がメイク室に入ってくる。
一番後ろにいるうちの末っ子は、目に見てわかるほどそわそわしていた。
「なぁ、タマ…」
「二階堂さん」
俺がタマを呼ぶ声を遮り、イチがちょっと。と、俺を廊下に呼んだ。
「どうした?」
「四葉さんの件ですが、どうやら彼女とは昔からの知り合いのようです。なので、そこまで神経質にならなくても大丈夫かと。釘は私が刺しておきましたから」
伝わってるかわかりませんが。と、ため息をつきながら言うイチに、思わず笑いがこみ上げる。
「何を笑っているんですか?」
「いや、ごめんごめん。お兄さん、片瀬ちゃんとタマが知り合いっての、実は知ってたんだ」
タマの反応が見たくてつい揶揄った。と言えば、イチは眉間にしわを寄せ、趣味が悪いですね。と言いながら、そっぽを向いた。イチは仲間思いだな。と頭を撫でたが、全力で振り払われた。イチ、今のはお兄さんちょっと傷ついたぞ。
そんなこと思っていたらメイク室から、ナギの甲高い声が聞こえる。
「Oh!タマキ、とっても大胆です!」
「たっ!環?!」
「りっ、陸くん、顔が真っ赤だよ…!」
不思議に思った俺たちは顔を見合わせドアを開け、固まった。
環が片瀬ちゃんを抱きしめていたのだ。
「ちょっ、ちょっと!四葉さん!なにしてるんですか!」
横にいたイチは息を荒くしながらタマと片瀬ちゃんの元へと向かう。
お兄さんはなんというか、あのタマが女性を抱きしめている光景に驚きすぎて、ただ見てることしかできなかった。
いや、嘘だ。ちゃっかり写真は撮った。
「早く離れてください」
「やだ!やっと会えたんだからちょっとぐらいいーじゃん!」
「先ほども話しましたが、あなたはアイドルなんですよ!」
「いおりんうっさい!アイドルとか、今関係ないし!」
ぎゅーっという音がつきそうなほど片瀬ちゃんを抱きしめながらイチと言い合いをするタマ。それを微笑ましく見ている周りの大人たちと、どうしたらいいかわからなくて戸惑っているソウ、なぜか楽しそうなナギと顔を真っ赤にしているリク。
平和かよ。なんて思っていたら、片瀬ちゃんが、落ち着きなさい。と言いながら環の頭をぽんぽんと叩きはじめた。
「ねぇ、ほら、みんな困ってるよ?」
「だって、」
「大事なお仕事でしょう?」
その一言でタマは、はっとし、腕の力が緩め、2人はそっと離れる。タマは周りを一瞥して、バツの悪そうな表情を浮かべながら、片瀬ちゃんにまた向かい合った。
「…ななみんは俺に会えて嬉しくないの?」
「嬉しいよ?でもそれとこれとは別。みんなに迷惑をかけたらダメでしょ?」
ね?四葉くん。と、タマの手を握りながら諭す彼女の声は優しく、その声が一瞬で作り上げた2人の世界はなんだか見てはいけないようなものを見ている気分で、なんとなく視線を泳がせた。それと同時に、イチがごほん!とわざとらしく咳払いをする。
「時間が押してしまうので、そろそろいいですか?」
2人をジト目で見ながら淡々と言い放つイチに、よくやった。と心の中でつぶやきながら、俺はナギを連れてメイク室を後にした。
その後、なんで俺も呼んでくれなかったんだよ!と、先に打ち合わせに入ってたミツに怒られたのは、また別の話だ。
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