お正月




「なぁなぁ、ななみん。おみくじ引いた?」

新年最初の現場で環くんのヘアメイクを担当していると、環くんが目を輝かせながら聞いてきた。初詣に行ってないと話せば、えー!!なら一緒に行きたかった!と、騒ぎ出す環くん。


「オレさ、みんなと行ったんだけど、おみくじ引いたし、お賽銭もちゃりーんしたし、わたあめ食ったり、たこ焼き食ったりもして、あとバレー部のふりもした」
「バレー部?」

そう尋ねれば、かくかくしかじかとことの成り行きを話してくれて、無事楽しめてよかったね、と言えば、超楽しかった!と、溢れんばかりの笑顔が返ってきた、

「そんでさ、初詣行ったら着物の女の人いっぱいいてさ、ななみん絶対似合うと思ったんだよな」

そう言いながら振り向いて私を見やる環くんを、ちゃんと前向いてて。と、正面を向かせる。


「着物は着るの大変だからねぇ」
「着た事はあんの?」
「あるよ、成人式の時に振袖をね」
「へぇー。どんなやつ?」
「水色の、桜柄のやつ。あとで写真見せてあげるね」


そう言えば、やったー!と喜んでくれる環くん。


「環くんは今日は袴だもんね、かっこいいだろうな」
「へへっ、そん時はあの髪型して」
「ハーフアップのおだんご?」
「そー!あれが一番好き!」
「わかった、確認しとくね。その前に、今日はねずみだね」
「そー…これ、ちょっとはずい。いおりんは好きそうだけど」

オレがつけてても可愛くないし。と言いながらカチューシャをいじる環くんに、大丈夫かわいいよ?と言えば、環くんは嬉しそうに笑った。
そして数分後、ヘアもメイクも終わった旨を伝えれば、そうだ!と、環くん勢いよく立ち上がる。


「ななみん!これ、つけて?」
「え?私が?」
「そー!着物見られないから、代わりにねずみ見たい!」
「着物の代わりがねずみなの?」
「いいからいいから」

ほら。と手渡されたカチューシャを渋々つけると、めっちゃかわいい!と、抱きしめられる。かわいいと言われてちょっと気分が良くなった私は、環くんを見上げながら、チューチューと鳴いてみた。
すると、今?と呟き、首を傾げながら、チュッと音を立てながら、キスをしてきた環くん。


「…珍しいね」
「だって、チューって言うから」
「…ねずみの鳴き声真似しただけで、別におねだりしたわけじゃないよ」


そう言えば、え!と声を上げながら顔を真っ赤にし、その場にしゃがみ込み、腕で顔を隠してしまった環くん。あー…とか、うー…とか唸ってる環くんに合わせて私もしゃがみ、その頭を撫でる。
しばらくそうしているうちに、環くんが顔を上げはじめた。


「ごめん、めっちゃはずい」
「別にいいのに」
「あー…オレまだ顔赤い?まだ楽屋戻れなさそう?」


そう言いながら上目遣いで聞いてくる環くんに笑みをこぼしながら、ちゃんと顔見せて?と、両手で頬を包み上を向かせる。
すると環くんは私の手に手を重ねぎゅっと優しく握りながら、こう囁いた。



「ねぇ、ごめんやっぱりさ…まだ楽屋戻れなくてもいいから、もっかいチュー…させて?」



back


novel top/site top