ホワイトデー
「あのさ、これ、バレンタインのお返し…」
「えっ?」
いいから受け取って!と、拳を突き出すような形で渡されたそれを、私はそっと受け取った。
メイクが終わり、片付けをしてる最中、ななみんちょっと待ってて!とメイク室を飛び出した環くん。そんなに急がなくても、まだまだ片付け残ってるから大丈夫なのに。なんて思いながら環くんが戻ってくるのを待つ。
いつもよりも控えめなノックの共に、ドアの隙間からひょっこっと出てきた環くんの顔は薄ら赤くて、どうしたの?と声をかければ、えっと、あのさ…。と、片手を背中に回した状態で、環くんはゆっくりとメイク室に入ってきた。
そして、冒頭に戻る。
「お返し?わざわざ用意してくれたの?」
「大したもんじゃない、けど…」
「環くんからもらったものなら、何でも嬉しいよ」
ねぇ、開けていい?と尋ねれば、いい、けど。と、そわそわし始めた環くん。わー!なんだろう!と、紙袋を覗けば、中にはいろいろ入っていた。
「あっ!王様プリン!あとは…キャンディーと、マカロンと、カップケーキ?」
「俺、プレゼントとか、よくわかんなくて…。そんで、食べ物しか、思いつかなくて」
「食べるの好きだから嬉しい!」
統一性のない色々なお菓子に、つい笑みが溢れたが、一生懸命選んでくれた事がとにかく嬉しくて、ありがとね。と、環くんの頭をセットを崩さないようにそっと撫でる。
えへへ、と笑いながら、じゃあ俺もう行くな。とドアに手をかける環くんは、メイク室を出る直前に、あっ!!と声を上げた。
「どうしたの?」
「えっと、あの、さ」
「ん?」
「そのキャンディー、りんご味だから!」
そんだけ!と言い残し、バタン!と音を立てて閉められたドア。
「りんご…?私が好きなの覚えててくれたって事なのかな?」
首を傾げながらも、まぁいっか。と、そのキャンディーを一粒口にして、私はそそくさとメイク室をの片付けを再開させた。
そのお菓子たちに込められた想いを、私はまだ知らない。
2020.03.14
Happy White Day to you!
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