【clap log】彼パーカー




「三月くん、おはようございます」
「おはようございます!あれっ、その服…」
「えっ?」


ある日のテレビ局、楽屋前で出会った奈々美さんの服装を見て思わず声をかける。2、3度瞬きをして服を凝視するオレに、彼女は首を傾げた。


「服がどうかしました?」
「あっ、いや、なんか見覚えがあるなーって思ったんですけど、気のせいでした!」


じゃ、失礼します!と、オレは足早にその場を後にする。気のせいでしたなんて言ったけど、気のせいなんかじゃない。



あれは確か1週間くらい前…


「百さん、その服いいですね!」
「えっ!本当?似合う?!」


その場でくるっと一回転して目元でピースをする百さん。そんな百さんに、似合います似合います!と返し、再び服に目を向ける。

それは黒のフード付きパーカー。胸元にブランドのロゴが描かれている至ってシンプルなパーカーだが、やたらと百さんに似合っていた。それに、いつもオーバーサイズの服が多い百さんにしてはジャストサイズで、それも珍しいと思ったっけ。



そして今日彼女が着ていたのも、同じパーカーだった。最初はただ単にお揃いなんだと思ったけど、肩の位置と袖の長さ、丈の長さを考えると恐らくアレは、百さんの服だ。

所謂彼シャツってやつだよな…。
いや、パーカーだから彼パーカーか…。

2人で話してるのを見るよりもなんだかこう、リアルっていうか、なんて言うか、気付いてしまった時の気まずさがすごい。
薄らと熱を持った頬を覚ましながら、はぁとため息を吐き、俺は早足で楽屋へと戻った。




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「ねー、モモちゃん」
「んー?」
「今日の服装変?」


仕事終わり、モモちゃんの家に寄り会って早々尋ねる。
オーバーサイズの黒いパーカーにスキニーという至ってシンプルな服装。変なところはないはずだけど。と思いながら両手を広げてその場で一回転する私に、全然変じゃない!超かわいい!と言って抱きついてくるモモちゃん。


「なんで?誰かになんか言われたの?」
「言われてはいないんだけどね。三月くんに、会った時にすっごい見られたから」


なんか変だったかなぁって。そう呟けば、あぁ。とモモちゃんが何か思い出した。



「オレが前にそのパーカー借りた時、三月と同じ現場だったからかも」


彼パーカーだと思ったのかもね!なんてケラケラ笑うモモちゃんの言葉に、納得したと同時に一気に顔に熱が集まる。


「なんかすごく恥ずかしい…」
「えー!なに?!なんでそんな照れてるの?かわいい!」


抱きしめられる力が強くなったと同時に、ふと冷静になった。


「え、まって、他の人にバレてないかな…?」
「ん?大丈夫じゃない?同じ服なんていっぱいあるんだし!」
「これ、企画でもらった非売品…」
「えっ…」




これ以降、私たちはお互いの服は現場に絶対着ていかないと言うルールを作った。



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