地獄にて01


 見慣れないサイヤ人が手を振り、気楽に声をかけてきた。髪は固そうな黒髪だが腰に巻き付けたしっぽも無く、サイヤ人だと言われなければ他の異民族だと真っ先に思っただろうが、なぜかその男がサイヤ人だと言うその言葉を信じた。
 ラディッツは近付いてくる男に睨みをきかせる。地獄に落とされ何年も経つが、地獄に来る人間は根性の曲がった人間だって多い。その笑みは詐欺師の見せるような笑みにも見えたし、ただの馬鹿のようにも見える。
 殺風景な地獄の風景は風を遮る岩も少なく、ラディッツの髪がひゅうと風に囚われ形を変えた。

「サイヤ人に生き残りがまだいるとは思わなかった」
「そうだろうな、オレもオレが最後だと自負してる」

 ラディッツはそう言い放った男を見下ろし、ふん、と意地の悪いような笑みを作った作る。最後か。本当に、もうサイヤ人はいないのか。王子や弟が地球にいることは知っているが、こいつはきっとそのことを知らないのだろう。

「そのグローブには見覚えがあるが、お前もフリーザ軍にいたのか?」
「あー、うん、そうだな。半分と20年ぐらいか」
「半分?20年?」

 適当に物を言うのがうまい男なのだろうか。嘘をつき生き抜いてきた男であるなら、地獄に落ちた理由にもなる。ラディッツは改めてじろじろと男の体を眺めてみる。サイヤ人の肉体にも似た筋肉の盛り上がりを見て、相当に強そうだということは分かる。
 真実を言わせるのには力が一番だ。屈伏させてしまえばゲロと共に本音も見え始める。どうせここは地獄だ。悪人同士がぶつかって何が悪い。ラディッツは土を踏み締め、乾いた土の音を出した。

「戦う気か?」
「どうもお前は気にくわん」
「そんな事ないだろ。それよりお前の親父のとこに連れてってくれないかな」

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