Prologue


寝ているときに体がびくっとした経験、けっこう多くの人があるんじゃないだろうか。
ジャーキングと呼ばれる、筋肉の痙攣が原因とされるその生理現象。わたしもたまにある。そのときは決まって、落ちる、と思うのだけど。


――は?!


落ちる、と思って目を開けたら、本当に落ちていたのである。迫るのはだだっ広い水。腕で頭を守る体勢になったのはただの本能だ。意味があろうがなかろうが関係ない。水に突っ込む寸前、ぎりぎりで息を止めて目を固くつむったものの、飛び込みの選手じゃあるまいしきれいに着水なんてできるわけもない。
幸か不幸か、水に落ちた衝撃は大きかったのに痛みはあまり感じなかった。

自宅のソファでうとうとしていたはずのわたしが、なぜ溺れそうになっているのか。
夢であってほしいのに、悲しいかな現実なのであった。

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