Sanji


犬と猿も喰わぬ仲


彼が背中に哀愁を漂わせているのは、やられた身体的ダメージというよりは、精神的ダメージが大きかったせいだろう。

こう言ってはどちらからも叱られそうだけど、ケンカするほど仲がいいんだから。
そうは言っても、やっぱり吊られた腕は痛々しいけど。

それにしても、その塩をふる彼の腕はいつ止まるんだろう。

「…サンジ、それ多くない?」

「うおっ!?」

「ふふ、心配なんだ?」

「なっ!誰があんな野郎の心配なんか!」

ふいと向けられた背中に背を合わせた。

「だいじょうぶ」

「、おれは、別に…」

「そうだね、わかってるもんね」

ぐ、と言葉につまる彼を笑うと、背中で軽く押し返された。

笑ってんじゃねェ、って。

あいつが仲間を裏切るようなやつじゃないってことは、みんなも、彼も、わかってる。ただ、向けられた刃の理由がわからず、苛立ちの矛先を決めかねているだけなのだ。

「ん」

ふいに離された背中を不思議に思う間もなく、横から出されたお皿には湯気の立つスープが注がれていた。

「ありがと」

あたしに1番に渡してどうすんのとは思うけど、緩む口元は隠しようもない。
「みんなに配ってくる」とわたしの頭を撫でた彼は照れくさそうで、強ばった表情なんかより全然いいやと思った。



「あーあ、誰よりへこんでて心配なくせに強がっちゃって。かーわい」

「あら、本当」

「ちょ、やめてよロビン。わたしおねえさまに勝てる気しないんだけど」

「そんな野暮なことはしないつもりよ」

「おーい、蒼子ちゃん、ちょっと来てくれるかい?」

「ほら、彼はあなたしか見えていないんだから」

more & more