思わぬ接点
予定通り記者として軍事パレードに紛れ込み、協力者との情報交換を行った。
軍事力は想定の範囲内で拡大しており、ドイツが戦争を始めるのも時間の問題に思われた。
「今後の動向に何か変化は?」
「本格的に医学薬学に力を入れるようですよ。なんでもこの後自ら大学に視察へ行くとか」
「ほう…行き先は?」
「これです」
差し出されたのは大学教授の名刺。素早く目を通し、下げていいと手で合図する。
国立大学の血液医学研究所所長、名はゲオルグ・ハイマー。
「相変わらずですね」
「無駄なものは持たない主義なんだ。じゃあ、また何かあれば連絡する」
それを最後に俺はその場を離れた。
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大学に先回りし監視のしやすい位置でマトの到着を待った。
しばらくするといかにも防弾の行き届いてそうな黒の車が校舎内に入り、そこから先ほどの凱旋パレードに出席していた軍部長官が現れた。
付き添いは2人。楽に監視ができそうだ。
「ん?あれは……」
いかにも強面そうな軍人3人に初老の男性と女学生が近づいた。
男はゲオルグ・ハイマーで間違いないだろう。だが、俺が驚かされたのは隣の女学生だった。
「(パン屋の店員がなぜあんなところに…)」
思わぬ誤算に一瞬見間違えかと思ったが、もう一度良く見てもそれはfirst name・last nameだった。
固い表情で長官と握手をした後、隣の軍人と何やら話をしている。知り合いなのか?
そうこうしているうちに、一行は建物に入っていった。歓迎もそこそこに本題に入るようで、向かったのは研究棟のようだ。
「(気になることは有るが、ひとまず目当てであろう研究の内容を見に行くか)」
研究棟に向かったのなら、当分はゲオルグの研究室に戻ってくることはないだろう。
研究内容を盗み見るとともに、盗聴器を仕掛けるため、俺はゲオルグの研究室へと向かった。
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研究内容を一通り読んだ結果、どうやら最近の研究で血液の分類をさらに細分化することで、拒絶反応を抑え生存率を上昇させることに成功したようだった。
連名で出された報告書には、ゲオルグをはじめとする研究員の名前が並んでいる。
「まさか、こんなに優秀だったとは」
連名の末席には、first nameの名前が記されていた。
つくづく彼女は俺に驚きを与えてくれるようだ。
入手した次期特別研究員の候補リストには一番上に彼女の名前が書かれてあった。相当の期待をされているらしい。
そんな彼女がアルバイトをせざるを得ないとなると、どうやら金銭的にはかなり困っているようだ。
「(必要とあればfirst nameを取り込めば…)」
優しく接して頃合いを図って親密度をあげれば、取り入ることは可能なはず。
「(贅沢をしたことがないようだし、彼女ではいけないようなレストランに連れて行って…)」
と、そこまで考えて我に返った。
何を回りくどいことを。適当に金を握らせる方が手っ取り早いに決まっている。
それに彼女の周りには多くの男子学生もいる、おそらく金だって持っているだろう。彼女の振る舞いからして金銭をもらうことは無くても、食事くらいは行っているのではないか?
ぐるぐるとそこまで考えて、思考を放棄した。
取り入るべきかも決めていない段階で取り越し苦労をする必要もない。
手早く盗聴器を仕掛けると、侵入からそこそこ時間が経っていた。そろそろ退散としよう。
傍聴器を耳に付け、部屋に鍵をかけると、俺は盗聴のために屋上へと向かった。
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