マシュマロ


 


『密さーんまた寝るんですか』

「んんー…」

『1日に何時間の睡眠をしたら彼は起きてくるの』




飽きずによくもまあ寝ること。
あたしなんて寝すぎると頭は痛くなるし、体はだるくなるしで最悪なんだけど。

ソファで丸くなり、すやすや眠る密に、少し意地悪してみようと試みる。




『ごほんっ。えーっと、これ』

「……んー」

『食べちゃおっかなー』




そういってローテーブルに置かれるマシュマロの袋をかさかさと音をたてて触ってみる。

反応、無し。それなら、




『いただきまーす』

「っ!」

『うわっ』





袋を手にとって、マシュマロを一つ、口に入れようとするまさにその瞬間。
あたしの太ももで寝ていた密が飛び起きた。

両手を掴んで、ソファに押し倒される。
左手で持っていたマシュマロの袋は床に落ちてしまう。辛うじて右手のマシュマロは掴んだままだ。




『っいた…』

「…マシュマロとった」

『ずっと寝てるから…』

「返して」

『ひとつくらい…』

「返して」

『わかりましたー』




そういって、右手にあるマシュマロを食べようと密の口が近づく。




『っ!』

「…なにしてんの」




とっさに。密の口から逃げるようにマシュマロを落としてしまう。
だってなんかすごく恥ずかしかった。両手は掴まれている状態だし、そんなとこであーん
してあげるのがなんか…。

落ちたマシュマロはちょうどあたしの首と胸の間のくぼみ辺りにちょこんと乗っていた。




「…」

『…あの密、そろそろ手を…』

「マシュマロ、落ちた。食べられない…」

『だから、手を解いてくれれば…』

「あ…。そうか…」




思い付いたように、首元に顔を埋める密。
やばい、これは。




『ま、密っ!たんっま…』

「動くと食べられない。じっとして」

『でも!』




いやいやいや、まずい。
あたしの上に乗っかる密に両手を掴まれて、ソファにはり付けられている。
挙げ句、首元に顔を埋めるとか…!




「少し顔を上げて」

『え、どうやって…』

「顎を上に向ける感じ」

『…こう?』

「そう、いいこ」




密はそういうと、首元に落ちているマシュマロを取る。

もぐもぐと食べる音が聞こえて、ようやく解放される、そう思ったのに。

突如、首元にぬるりと現れる感覚。




『ひあっ、!』

「あ。顎引いちゃダメ。上に向けて」

『だって、そしたらまた…』

「マシュマロが落ちてたとこ、舐めてあげる。手で食べるとき、指先舐めるでしょ。それと同じ」

『え、マシュマロって粉とか手につかないよね!?』

「早く、上向いて」




観念した、また仕方なく上を向く。少し震える。




「ん、ちゅる」

『や、あ』

「甘い…ん、ちゅっ」

『っん、ん、あっ』

「声、うるさい」

『だって、んんむ』




首元で、散々遊ばれて、今度はうるさい、と口を塞がれる。
さっきまで寝ていた男とは思えない行動だ。




「んっ。はぁ…」

『はぁっ、はぁ』

「もうマシュマロを勝手に取ったりしない?」

『…しない』

「食べたいときは俺に言って。またこうしてあげる…」

『っ遠慮します!』

「名前ごと食べられるから、俺は一石二鳥なんだけど。いただきます、」




寝ていてもらった方がいいかもしれない。
そしてマシュマロを勝手に取ることは、やめよう。完全に雄の目をした密を前にそう心に誓った。

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