よくよく考えてみると、小さな頃から無鉄砲で向こう見ずだと言われたことは多々あった。加えてドジなところもあり、おてんば娘とは言われたものだ。危なげながらも九九を言えるようになってから大人に言われていたことなので、その言葉の意味などわかるはずがない。当時の私は、おぼろげな記憶だが間抜け極まりない返答をしていた。しかし、高学年にもなり意味を理解し始めると、それに対する切り返しも鋭くなっていく。すると、誰もそのように構ってくる人間などいなくなったわけで。とある人物を除いて、だが。

「ねえ、私、頑張ったよ」
「あんたが頑張ってるのなんてずーっと前から俺が知ってるっつの、誰にも見てもらえてなくてもね」
「……泉すき、だいすき」
「……ほんっと単純な馬鹿」

 離れて、と絡めた腕を解くように言われ、離す。離れろと言った割には満更でもなかったのか、今度は彼から無骨に手を握られた。

「馬鹿な奴の手を繋ぐの? 嫌じゃないの?」
「あんたほんとに馬鹿。俺が拒絶したらあんたの行き場なくなるでしょ」
「……」
「事実でしょ?……名前のこと可愛がってるつもりなんだけど、俺」

 だから泣きそうな顔しないでよ。泉くんはそう言って優しく微笑む。言ってることが辛辣だったり現実的な言葉ばかりだが、どうも色の良い唇が紡ぐ物は体がすんなりと受け入れる事ができてしまう。すっかり惚れ込んでるなあと思ってしまう、自分でも馬鹿じゃないかと思うほどに。
 返事の代わりに繋いだ手を握り返す。長らく人の体温を感じなかった体に染み込む熱に、急速に心が満たされていくように思った。

「まあ、そう会える機会は増えないと思うけど、ひと月に2回くらいは会えるようにしとく」
「うん」
「だから、間違っても死のうだとか、家出するだとか考えんじゃないよ」
「…うん」
「…そんなことしようってんならあんた地獄行きだから」
「…えー」
「俺も一緒にね」

 珍しくもないジョークが彼の口から飛び出したわけだが、どうにも面白くない笑えないものでも私は彼の思惑通りに笑みを零してしまう。

「ただのデートだよ、それ」


指折り数えて逢いに行く
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