セクシー担当


「なぁ。」

それまで一言も発しなかった夫に呼びかけられ、洗濯物を畳みながら妻は穏やかに答える。

「なあに? 百之助さん。」

妻・夏也乃はわかっていた。わかった上で、わからないフリをしているのだ。

「なあにじゃねぇ。……わかるだろ。」
「さあ?」

夏也乃はわかっている。尾形は銃の手入れも済み、お風呂はお互い先程済ませたばかり。夕飯も食べ終わり、洗濯物を畳み終えれば、あとは寝るだけ。
そして、明日は尾形は非番だ。

「ちゃんと言葉にして誘って下さいませんと、わかりませんわ。」
「やらせろ。」

ストレートすぎてロマンも雰囲気もあったものではないが、尾形から誘ってくれたのが嬉しい夏也乃。
丁度洗濯物を畳み終わり、夫の元へ歩み寄る。

そして口付けをするために、相手の腕を引いた。
お互いに。

「あら、今夜は私が上になろうかと思いましたのに……。」
「あ? 一昨日したばかりだろ。今日は俺が…ッ!?」

ツツ、と指でなぞられ、尾形はあからさまに動揺する。
ふふ、と夏也乃は口角を上げ、尾形の唇に人差し指を当てる。

「気持ち良くなりたいですよね?」











「…………。」
「終始私に主導権を握られたからって、そんなに不機嫌にならないでくださいな。」

そう言って妻が微笑むと、尾形はバツが悪そうに目線をそらす。

「けれど、まさかあんなところも弱かったなんて。」
「やめろ。」
「ふふっ、百之助さんのあの反応。今思い出しても可愛いわ……。」
「…………。」

「可愛い」と言ってうっとりしている夏也乃。尾形は不意に、彼女の細い腰を太ももから撫で上げた。

「っ……!?」

頬を染める妻の様子を見て、愉快そうに笑う尾形。

「ははッ、お前も中々可愛いじゃねぇか。なぁ?」

あ、これ完全にスイッチ入った。
頭の中の警報が、ピカピカとランプを点滅させながら、けたたましく鳴り響いている。
しかし。

「朝までまだ時間はたっぷりある。……俺が満足するまで付き合ってもらおう。」
「はい。喜んで。」

射抜くような、獲物を狙うような、そんな目で見下ろされ、これからするであろう様々な行為、体勢を想像し、ゾクゾクと期待や興奮が電流のように全身を駆け巡る。

……翌日、夏也乃、そして尾形までもが腰に痛みを覚え、一日中外には出ずに互いの腰を労ったのは言うまでもない。
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