ここはどこだろう?

ユノは目を瞬かせた。
はて、自分は昨晩仕事を終えて帰宅し、間違いなくベッドに入り、そして死んだように眠ったはずである。
しかしなぜ今、自分は森の中に横たわっているのだろうと辺りを見回す。

「どこ……ここ……。」

自分が住んでいるところは、田舎ではあれど、こんな森が広がる場所などない。
車で30分程走らなければ、ない。

「やぁーーーーーっ!!!!」

キィン!!

「!」

何やら、少し行ったところで騒ぎが起こっているようだ。
ユノは、よっこらせと言いながら体を起こし、そちらへと歩を進めた。

「!?」

そこは、戦場であった。
足軽たちが槍を持ってお互いに向かって走り、人を蹴り、押しのけ、刺している。
見た瞬間は、映画の撮影だろうかと思ったが、どうもそうではないらしい。

「ちょっと、そこの君!」
「?」

声がしたのでそちらを振り返れば、そこには忍の格好をした青年がいた。
忍者がどうして普通にうろうろしているんだろう、と呑気に考える。

「本物の忍者……?」
「え? ああ、まぁ……本物の忍者だけど?
…それより、ここにいたら危ないよ。見たところ、南蛮から来たのかい?」
「南蛮……?」
「! 伏せろ!!」
「!」

突然叫んだと思ったら、自分を抱えて後ろへ飛び退いたものだから、ユノは何が何やらわからない。

「……こんな風に、ここは危険がいっぱいだ。
君のような女の子がいていい場所ではない。」
(女の子? 何言ってるんだろうこの人……。)

自分はもういい歳した女で28歳で、女の子と呼べる見た目ではないはずだがそんなに幼く見えるだろうか……と、何となく己の頬をむにむにと触ってみる。

「とりあえずここから一番近いのは、忍術学園か……。」
「忍術学園……?」
「丁度今から昼休みだし、一緒に忍術学園に行こう。」

忍術学園、ということは、忍術を学ぶ学校なのだろうか? それともそういうテーマパークか?
しかし、そういう場所が出来たというニュースは特に流れなかったと思う。
とするとここは、自分がいるここは……。目の前で繰り広げられていた戦闘は……。
ユノは少しの混乱を覚えながら、自分の手を引いて小走りで進む青年の背中を見つめる。