「私やっぱり分からないわ」
空き時間、奥の隅の席でひっそり一緒に勉強をしていたハーマイオニーが不意に呟いた一言だった。そんなに悩む問題があったのだろうかと顔をあげれば、何とも言いたげな顔をして頬杖をついたままジッと怪訝そうな視線を彼女から送られている事に気付く。
「……そんなに難しい問題があったの?」
「違う!全然違うわ、名前あなたのことよ」
「私?」
図書室とあって声のボリュームこそ小さかったもののその後ではぁと大袈裟にため息を付かれてしまった。ますます分からず、とりあえずペンを置き話を聞く態勢に入る。するとハーマイオニーも開いたままの分厚い本を閉じぐっと身を乗り出した。近い近い。
「いくら考えても貴女があのマルフォイとあんなに親しいなんて……」
「またそれ…?」
「だ、だって」
思わずクスクス笑った私に彼女はちょっとばつが悪そうにしながら椅子に座った。
「それに、貴女がスリザリンって事も合わせて…」
「スリザリンも私みたいな人はいるよ、まあ……ほんの少しだろうけど」
だからよ!と言う彼女にシーっと口に指を当てるジェスチャーをすれば慌てた様子でキョロキョロと辺りを見渡した後、ほっとした顔をして再び話を始めた。私としては、そんな彼女の方がよっぽど面白いし学年首位がこんなゴシップ的なことを気にしてる方を問いたい気分である。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてる聞いてる。うーん…そうね…改めてそんな風に理由を聞かれるとねぇ…」
「……私、知ってるのよ?この前ハッフルパフの上級生に貴女がホグズミード一緒に行かないかって誘われたの。」
「あら!随分と耳が早いのね!」
「……相手があの有名な彼ならね、断ったってファンクラブの子がキーキー言っていたのを小耳に挟んだの」
勿体無いと言いたげに首を振る彼女越しにちらっと時計が見えた。随分と長居をしていたようで、そろそろ次の授業の用意をしなくてはと思い立つ。次はなんせ魔法薬学だ、遅れたら大変な事になる…だろう。
「ホグズミードは先約があったから断ったのよ」
「もしかして…………マルフォイ……?」
「大正解!」
「もう…」
「ふふ…確かにマルフォイは直ぐに嫌味を言うし、臆病でちょっと泣き虫だけど良いところもあるの」
話しながら教科書やらを片付ける私に頭をかしげるハーマイオニーに時計を見せてトントンと叩くとあ、っと言う顔をして慌てて同じように仕舞い始める。
「でもやっぱりにわかには信じがたいわ……だって…」
「…そうね、それは前私がきつーく言っておいたから。まぁ…珍しく納得いかないって顔してたけど」
「私は…貴女が本当に幸せならそれで良いのだけれど」
思わずぎゅっと彼女を抱きしめた。なんて可愛い子なんだろうと。そんな私に少しだけ苦しそうにハーマイオニーは騙されないわよ、と言った。
「心配ご無用!私の幸せは私で掴むし決めるの」
「そうだったわ、名前強いもの。私の心配なんてなんのそのよね」
違うよ!っと慌てて後を追えば少しはしゃぎ過ぎたのか2人揃ってマダム・ピンズに追い出されてしまった。
***
駆け足で教室に向かえばどうやら間に合ったらしい。が、よほどスネイプ先生の怖さが身に染みているのだろう生徒でもう既に席は埋まっていた。座るところあるかな…と辺りを見渡す私に不意に声がかけられる。
「苗字!」
マルフォイだ。ポンポンと自分の隣を叩いている、席を取っててくれたらしく私はそれに甘えた。彼の前の席にはパンジーが座っており危なかったわねっと言ってくれた。
「君のとこだからまた何処かで油を売って遅れるかと思ってね」
ふと、先ほどの会話が脳裏をよぎり頬が緩むそ私を彼は不思議そうに見つめた。そんな表情ももしかした私しか知らないのかもしれない。
「ありがとう、マルフォイ」
するとちょっと上機嫌そうに彼は気にするなと返してくれた。
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