職場体験・三日目(前編)
職場体験も三日目となった。
体験自体は保須市のパトロールばかりで、今日も今日とて2チームに分かれて――
「綾目、お前は向こうのチームだ」
なんと。
エンデヴァーさんが指差すのは、二手に分かれたうち、エンデヴァーさんのいない方のチーム。
「出発前に俺とパスを繋いでおけ。焦凍ともだ」
ずいと拳を突き出すエンデヴァーさん。
どうやら昨日の会話はしっかり聞かれてたらしい。
エンデヴァーさんのヒントで編み出したわけだし、私の個性の使い方の変化にエンデヴァーさんが気付いてないことはなかった。
もしや、最初に個性を使ってこいと言ったのも、私に気付かせるヒントだったのかな。
「はい……」
がっしりした体から伸びる腕は同じようにがっしり太い。
おずおずと触れて個性を発動する。
同意の上でのパス、スイッチが切り替わる感覚。
これでパトロール中にパスが切れなければ、保須市内程度の距離は繋げられることになる。
轟くんとも繋げることで、複数人同時接続も試せる。
うーん、さすがエンデヴァーさん。合理的だ。
プロとしての能力に感服しながら轟くんともパスを繋げ、パトロールを開始した。
***
エンデヴァーさんのいない方のチームは、いる方と比べて会話が多かった。
その中で、エンデヴァーさんとの仕事や、サイドキックとしての取り組み、事務所の制度、福利厚生諸々から仕事の愚痴まで、色んな話を聞くことができた。
エンデヴァーヒーロー事務所は規則もきっちり定められていて、休暇や報酬も良いらしい。
活躍に合わせて昇給制度があったり、さまざまな研修制度も受けることが出来て……
ほとんど企業だ。
エンデヴァーさんがサイドキックに求めるものも多いけど、相応の報酬があるし数多のヒーロー活動が経験できてやりがいがあるとのこと。
まるで企業説明会を聞いてる気分になりながら、街を練り歩くうちにあっという間に午後。
休憩時間にスマホを確認すると、轟くんから連絡が来ていた。
現在地情報と見えた数字について。
パスもまだ繋がってる感覚はあるし、幻覚は届いているらしい。
ということは、ある程度の距離は継続可能だ。
街一つ分ともなれば、結構汎用性は高い。
あとの問題は、情報の見せ方。
エンデヴァーさんからも連絡があって、イメージを寄越せ、からの見せ方に対する批評をもらっている。
電話越しにエンデヴァーさんと会話したときは緊張しすぎて何を喋ったか覚えていない。
耳のすぐ近くからエンデヴァーの声、すごい。
ともかく、今の幻覚の見せ方では仕事の妨げになるとのお言葉だった。
私の個性、アイジャック。
視界をジャックする……正確には、私の脳内で構築したイメージを相手の網膜に出力して、相手の脳が受け取る視覚情報を上書きしており、体の一部を触れさせることにより形成されるパスとは……と小難しい話をすれば長くなる。
簡単に言えば、私と相手のパスを繋いで、私の脳から相手の目にイメージを送っている。こちらからのみの一方的な通信だ。
目に送る以上、視界を上塗りするのは避けられない。
相手の妨げにならないようにと考えると、送る方法も限定される。
送るのを一瞬だけにするとか?
いや、一瞬だと情報として理解できない。サブリミナル効果を狙うわけじゃあるまいし。
サイズを極小にして、殆どさえぎらないようにするか。
これもダメだ、小さくしては何か分からない。
うーん、他の方法は……
考え事をしていると、また周りが見えなくなっていた。
職場体験中!
思考を中断して、下がっていた視線を持ち上げる。
そろそろ日も暮れるし、学校終わりや仕事終わりの人がだんだん増えてきた。
パトロール中の集団で、ヒーロースーツの中に一人だけ体操服なので、自然と視線が集まるのを感じる。
雄英生ってすぐに分かるしね。
体育祭でテレビにだって出てしまったし、ちょっともじもじする。
いやそれよりも、人通りが多くなってきたということはそろそろ事件発生率の高くなる時間帯だけど――
轟音。
地鳴りと共に、右手のビルが崩壊した。
え。
何が起きたの?
どよめく人々が、一斉にビルを見上げている。
立ち上る砂煙の中で、蠢く影。
何かがいる。
徐々に薄らいでいく煙の向こう、不意にその姿を捉えた。
いびつな形相。
黒い皮膚、人間の何倍も大きな体。
下顎しかない顔では表情が読み取れず、意思を感じない。
なによりむき出しになった脳が、常軌を逸している。
ざわめく人々。視線が吸い寄せられる。
屋上の土煙が晴れて、徐々に何が起きたのか明らかになる。
コンクリートが砕けている。まるで力強く踏み抜かれたように。
まさかあいつが?
その通りだと証明するかのように、異形の存在は崩壊した屋上の床を掴むと、あろう事かベリベリと剥ぎ取った。
発泡スチロールかってくらい軽々と。
そして――投げた!!
飛来する石の塊に、人々は悲鳴を上げる。
あれは何?同じ地球上の生き物なの?
あんな、あんなものがいるなんて……
「綾目さん!一般人の避難誘導!」
「は……はい!」
サイドキックの指示で、呆然と立ち尽くしていたのに気付いた。
あまりに突然で動けなかった。
あれはヴィランだ。
目的は分からないけれど、街を破壊して、一般人に恐怖を与えている。
なら、ヒーローの出番だ。
プロが食い止めてるうちに一般人を避難させなくちゃ!
正体不明のヴィランがビルから飛び降りた。
ズシンと重たい着地音が響き、地面がひび割れる。
見た目通りの重量。あの体で暴れられるとどんな被害が生じるか。
サイドキックと集まってきたプロヒーロー達がヴィランを囲み、残った人が警察へ通報、一般人の避難を始めた。
それに倣って人々を現場から離しながら考える。
今こそ私の個性を使うときだ。エンデヴァーさんに伝えなきゃ!
ヴィランの特徴、外面だけでも感じる禍々しさを。
相手の個性はなんだ?
あと、ここの位置情報も必要に――
「!」
またしても大きな音がした。
ビルの向こう側から壁をえぐるように飛び出したのは、巨大な翼を持った、やはり頭部がむき出しになったもの。
異形のヴィランがもう一体。
驚いているうちに、黒い方のヴィランが丸太のような腕を振り回してヒーロー達を吹き飛ばす。
私の真横を通り過ぎたヒーロー。
人が簡単に吹っ飛ばされた。
テレビの中や体育祭で似た光景を見たことがあるけど、明らかに違う。
肌で感じる殺気。
ただただ殺意のみを持った一撃を目の当たりにしたのは初めてだ。
これが、ヴィランとの戦い。
怖い……!
規格外のパワーに、プロヒーロー達も反応が遅れる。
暴風みたいなヴィランに必死に食いつくも、簡単に投げ飛ばされてしまう。
頭上は羽を持ったヴィランが飛び、鋭い鉤爪でヒーローを空中へ攫う。
こんな、まるで地獄絵図みたいな。
目的も不明、ただ破壊のみを繰り返す。
こんなことって……
だ、ダメだ。怖がってる場合じゃない。一刻も早く応援を呼ばなきゃ!
「!」
その時、更に遠いところから爆発音が聞こえた。
空を見れば、ビルの向こうから煙が立ち昇っている。
断続的に聞こえる悲鳴と破壊音。
まさかこいつらみたいなのがまだいるのか。街中に?!
とすると、エンデヴァーさんも交戦中かも知れない。
そんな状態で視界を覆ってしまったら、一瞬の隙が命取りになる。
今の状況じゃ私の個性は使えない!
「なんだあれ……アイツらが騒ぎの元凶か!」
一般人はあらかた避難し、更にヒーローが到着した。
魚介類を彷彿とさせるヒーローコスチュームの男性。
直ぐに加勢するかと思いきや、焦った様子で周囲を見回している。
「あれ?!天哉くーん!!どこ行った?!」
天哉……?
もしかして飯田くんのこと?!
脳裏を過ぎる轟くんとの会話。
飯田くんも保須に来ている。
あの人が飯田くんの職場体験先のヒーロー?
この騒ぎではぐれたの?!
飯田くんも行方不明なんて、まずいよ尚更伝えなくちゃ、今この状況を!
どうしよう、誰に、エンデヴァーさん?轟くん?
どうやって、どうしたら……!!
「ホラ綾目さんも避難!」
混乱している私をサイドキックが促す。
経験の浅い私じゃヴィランに対応できない。
現場から離れて邪魔にならないようにしないといけない。
でも、私の個性をここで使わなきゃいつ使う?
どうしよう、どうすればいいの!
ふと。
「……え?」
視界の端を過ぎった深緑色。
パッと顔を向ける。
あれは、緑谷くん?!
ヒーローコスチュームを纏った緑谷くんが路地裏へと消えていく。
緑谷くんもここに来ていたなんて。
焦った様子で何かを探している。一人だ。
緑谷くんも体験先のヒーローとはぐれた?
いや。
緑谷くんの性格からして、たとえヒーローとはぐれても、暴れるヴィランをほうっておくわけがない。
なら、それよりも優先することがあるんだ。
保須市。
エンデヴァーさんがここに来た理由。
轟くんの言葉。
飯田くんを探していたヒーロー。
緑谷くん。
飯田くんの、目――
「――!」
気付いたら走っていた。
緑谷くんを追いかけるように。
サイドキックの指示を無視して、エンデヴァーさんへの通信もせずに。
飯田くんを探していた。
私が行ったって何ができるでもないのに。
それでも、もし飯田くんがヒーロー殺しと遭遇してしまったのなら。
飯田くんが危ない。
今の飯田くんは!!
緑谷くんはどっちへ行った?
ヒーロー殺しのこれまでの手口からして、人通りの少ない路地が怪しい。
緑谷くんが虱潰しに探しているとしたら、私はもっと距離の離れたところを探るべきだ。
とにかく全力で喧騒から離れる。
すると――
「!!」
見付けた。
人気のないビルとビルの隙間。
極端に光の遮られた狭い空間にヒーローコスチューム姿の飯田くんがいた。
と、飯田くんの姿に影が重なる。
いや、あれは。
ヒーロー殺し!
報道された特徴と一致した格好の男。
飯田くんの攻撃を軽々と避けると、そのまま抉るような蹴りを繰り出した。
遠目からでは分かりづらいけれど、爪先になにか仕込んでいたらしい。
飯田くんの腕を捕らえたヒーロー殺しはそのまま引っ掛けるように跨ぎ、飯田くんの頭を踏みつけて地面へ押さえ込む。
容赦のない刃の一撃が左腕にも突き刺さった。
「ッ……飯田くん!!」
全力で走る。
二人は何事か言葉をぶつけ合っている。
ヒーロー殺しには、相手の言葉を聞く理由がある……?
「殺してやる!!」
その叫び声は、感情がむき出しになっていた。
普段の飯田くんからは想像もできないような、黒い濁りを纏っている。
飯田くん……
いや、今は救出優先!
路地に飛び込む。
ヒーロー殺しがこちらに気付いた。
先ほどの俊敏で戦い慣れた動き。
真正面からやっても勝ち目がない。
なら……!
「また子供か」
直進する私を睨むヒーロー殺し。
刃を後ろに引き、煩わしげに一閃する。
ここだ!
急停止、からの直角に曲がる方向転換。
飯田くんと轟くん相手にやった技。
すれ違いざまに触れて個性を――
「っぶな!!」
対応された!
凪いだ刀を切り返して追撃が来た。
ギリギリで避けて距離を取る。
「遅い」
私のスピードじゃ足りない。
今の初撃で戦闘スタイルは割れた。
個性もなしじゃ届かない!
「その格好、雄英生か……この子供の友人か?」
飯田くんを押さえつけたまま、ぬらりと佇むヒーロー殺し。
隙がない。
睨まれて、肌がピリピリと粟立つ。
さっきの化け物みたいなヴィランとは違う、明確な意思を持った敵意。
さっきのヴィランは最初のインパクトが強かったけれど、こちらは内側から冷やされるようなすごみがあった。
「綾目くん?!なぜ君が!!」
その足元で叫ぶ飯田くん。
「この子供を救うためか……ハァ。だが、この場をどう切り抜ける」
「!」
ヒーロー殺しの後ろにもう一人、ぐったりとした様子のスーツ姿の男性。
やられたのは二人!
飯田くん一人でも難しい状況なのに、負傷者二人では共に逃げることも叶わない。
さっきの一撃で実力差は明らかになった。
私一人じゃどうあがいても勝てっこない。
応援を呼ばなくちゃ。私の個性で。
相手はあのヒーロー殺し、送り方がどうとか言ってる場合じゃない。
ヒーロー殺しに構えつつ、頭の中でイメージを構築する。
ヒーロー殺し、現住所、負傷者二名、そして――
「逃げろ綾目くん……」
「えっ?」
押さえつけられてなお、飯田くんが声を絞り出す。
「手を出さないでくれ。こいつは僕の手で!!」
「飯田くん……」
この状況を見て、飯田くんを置いていけというのか。
でも、わかってしまう。なぜ飯田くんが頑ななのか。
地面に押さえつけられてなお、飯田くんの目は憎悪に塗れていた。
光を失った目。
体育祭のときの轟くんを思い出す。あの時の轟くんも、エンデヴァーさんへの憎しみで頑なだった。
でも、それ以上に似ている顔を知っている。
昔の私。
母を虐げられ、世間を憎んだ私。
連日報道するメディアも、同情を寄せる他人も、助けてくれたヒーローさえも、憎くてたまらなかった。
だから、見返してやろうと思った。私の手で世界を変えてやろうと。
それは復讐心とも言える。
飯田くんの憎しみは、それだけお兄さんを慕っていたからこそのもの。
お兄さんへの想いは、今の飯田くんを形作る大事な感情だ。
部外者がつっこんでいいものじゃない。
飯田くんは両腕を怪我してなお、立ち上がろうとしている。
しかし、ヒーロー殺しが刀を抜くと、途端に飯田くんの抵抗が収まった。全身に力が入らないみたいだ。
悠々と血濡れた刃を舐めるヒーロー殺し。
テレビで言ってたのを聞いたことがある。奴の個性か!
「煩わしい。この状況を見て何を躊躇している」
ヒーロー殺しが口を開いた。
「この子供は殺す。目先の憎しみに捉われ私欲を満たそうとした。他を救い出さず己の為に力を振るうなど、ヒーローから最も遠い行いだ……ハァ」
動けなくなった飯田くんから足を降ろし、こちらに向き直る。
「さて……貴様はどうする?」
静かに燃える目。
人を殺し、傷付けた。それは間違いなく犯罪者の行い。
だというのに、この男の言葉には力があった。静かながらも覇気のある声。
確固たる意志の元、言葉を紡ぎ、行動を起こしているというのか。
憎しみの為に、復讐のためにヒーロー殺しに向かった飯田くんを非難している。
その言葉は、確かに理解できなくはない。飯田くんもその言葉に動揺を隠せていない。
だとしても、戦わないという選択肢はない。
色々と思うところはあるけれど、見殺しにはできない。
「裁定者気取りか……」
言葉で強がってみたけれど、足が震えていた。
腰を低く落として、ヒーロー殺しに構える。
今の私が出来る最善手。
なんとか敵を御しながら、応援要請を送る。
まだ課題は残ってるけど、やるしかない。
頭の中でイメージを――
「!」
一瞬。
欠けた刃が眼前に迫っていた。
無理やり体を捻って回避。バランスを崩して手をつく。
と、そこめがけて振り下ろされる刀。
飛びのく。
その先に迫るナイフ。
「遅い」
「くっ!」
ナイフを握る腕を蹴飛ばししゃがむ。
頭上をかすめる刃。
すさまじい連撃に、脳内でイメージを構築する暇がない。
避けるので精一杯だ。
ヒーロー殺しの刃の向こうで、倒れ伏す飯田くんが見える。
その表情、悔しさ、憎しみ、苛立ち……
その気持ちは――
「何を惑う」
攻撃の合間にも、ヒーロー殺しは問う。
「窮地に在っても救いを求めない者は、救い出すことはしないと?」
「!」
飯田くんのこと。
図星だ。
分からなかった。
ヒーロー殺しと相対することで、飯田くんの心がどうなるのか。
飯田くんの気持ちは飯田くんのもの。
それを他人が乱すのは、良いことじゃない。
体育祭をきっかけに、今までの自分を顧みた。
他人の感情まで利用する、心理を揺さぶる戦法を止めた。
その人の想いを傷つけまいと、深く関わることをしないように努めて。
ヒーローとして、飯田くんを、今この状況を救けたい。
でも、飯田くんの気持ちはどうなる?
仮に私がなんとか飯田くん共々逃げ切ることができたとして、飯田くんはそれで良かったとなるだろうか。
お兄さんの仇を討てなかったとき、彼は納得できるだろうか。
私の行動が正しいのか分からなくて、その先が怖くて、戸惑いが生じる。
恐れていた。
私の動揺を感じ取ったヒーロー殺しの空気が変わる。
「ヒーローとは他を救う存在。救うことを躊躇するなど言語道断……貴様も偽物だ」
ぞわりと背筋を駆け上る悪寒。
「痛ぅ!」
スピードが上がった?!
ヒーロー殺しの刀が肩を掠めた。
後方に飛び退るも遅い。
ヒーロー殺しが刃を舐ると、全身の力が抜ける。
「綾目くん!」
飯田くんが叫ぶ。
ヒーロー殺しが動けない私の前に立つ。
その気配は、まごうことなき殺人犯――人を殺す者の気。
「貴様らを殺し、この地の粛清は完了する。ハァ……」
くそ……体が動かない。
ダメだ。このままじゃ全員殺される。
送らなきゃ。私の個性、情報を。
考える余裕なんてない、今使わないと死ぬ!
バツンッ!!
!?
パスが1本切れた!
焦りすぎた。
とにかく今の状況を送ろうと、目に見えてる全てを構築しようとして負荷がかかりすぎたらしい。
残ったのはどっちの?
ええいどっちでもいい!
はやく、はやくしないと――
「やめろ!彼女は関係ない!手を出すな!!」
「この場にいる者は全員殺す……ハァ……。この子供の次は貴様だ」
飯田くんの叫びをあしらって刃を掲げるヒーロー殺し。
「じゃあな、正しき社会への供物」
刀を持った腕に力が入る。
切っ先から目が離せない。
焦って思考が乱れる。
頭の中を駆け巡る記憶。
飯田くん、轟くん、エンデヴァーさん、学校でのやりとり、おばあちゃんたちとの日常。
やばい、これが走馬灯ってやつ?
お母さん。私の目標の人。
お母さんの個性、まるで魔法みたいな……あの姿に憧れて、そして私は――
その時、ヒーロー殺しが何かに反応した。
路地の向こう。風を切るような小さな音。
飛び込んできたのは深緑の影。
「緑谷……くん!?」
ヒーロー殺しの頬に一撃が入る。
路地の奥へ飛ばされるヒーロー殺し。
飯田くんをかばうようにその前に降り立った人影。
緑谷くん。
「助けに来たよ、飯田くん!」
2017.08.12