笑って
君の笑顔を見る為なら、俺はこの世界のすべてを敵に回しても構わない。
なんて、歯の浮くような台詞を馬鹿真面目に彼女に伝えたことがある。それは半分本気で、半分はただ彼女に笑ってほしいから出た言葉でもあった。案の定彼女はいつもの真剣な表情で、口角すらあげることなくただ、馬鹿なの、と言った。
「それは、私が敵になってもいいということ?」
「ああ、それが星彩のためなら」
なんて、軽く爽やかな笑みで返したはずなのに、再び返ってきたのはそれとは正反対の彼女の切ない表情、そして頬に静かに流れる一筋の線。えっ、と面食らった俺の手をそっと強く握る彼女の手。
「あなたが隣にいない世界で、笑えるわけがない」
ああ、どうしよう。失言に対する謝罪よりもその言葉に何よりも変えがたい幸福を感じてしまっている俺を、お願いだからどうか笑ってくれないか。
(だって、君の笑顔できっと世界は平和になる)