紙ヒコーキ
そいつは、風に流されるまま軽々とどこまでも、誰よりも高く飛んで行く。一度とんでもない速さで俺を置いて行ったと思いきや、時々俺が追いつくのを待つかのようにゆったりとした速度で進んで行く。その度にようやく追いついた、と思うのだが手を伸ばした瞬間また一目散に飛び上がり逃げて行くのだ。
パシッ
「うおっ」
咄嗟に伸ばした手はいとも簡単にその手首を捕らえた。完全に不意を突かれた気の抜けた声とともに、丸く見開かれた目が俺を見つめてくる。
「な、なんだよ急に…どうした?」
「え、なんか…なんとなく?」
必死に浮かべた作り笑いにも子上は何も疑うことなく、なんだよそれ、と純粋に溢れた笑顔で俺の馬鹿みたいな行為を包み込んだ。そして何にもなかったかのように、する、と逃げて行く手に、あ、また捕まえられなかった、と俺はなんとなく頭の片隅で思った。
(追いかけ続けるだけの恋)