私と彼、シルヴァンとは曖昧な関係でつながっていた。月に何回か二人で夜を過ごすだけの関係。
 彼には他にお付き合いをしている女性がいたり、彼が本当は女性のことを好きでなかったりという彼のパーソナルな部分もなんとなく気付いていたけれど、私にとってはどうでもよかった。彼の持つ紋章も興味がなかった。
 自分の持つ寂しさを埋められるなら誰でもよかった。しかし彼のことは好ましく思っているのも事実だった。つまりはこの関係を気に入っていたのだ。
 彼も私の無関心さを利用しているのか、「これ」は途切れることなく続いている。

 ある日、彼が課題から帰ってきたとき、「今夜どう?」誰にも聞かれない声で彼は私に訊く。
丁度その日は空いていたから、「空いているよ。今夜ね」私は言う。
 口ではそう答えてみたものの、正直彼にどう接すれば良いか分からないでいた。彼は自らの兄を討伐したと聞いた。彼自身は出立前に「兄上はもうただの盗賊の頭目だ」なんてことを言っていたけれど、そういった単純な感情ではないことは私にもわかった。

 結局私はなんでもないように装う。

 「入ってもいい?」
 「どうぞ。入って」

 少しお茶を交えて会話をした。私の鍛錬の話とか、そういうどうでもいいことだった。今節の課題については触れなかった。
 それからしばらくして、彼に抱かれた。

 事後の身体の怠さが私を支配する。なんというか、やりきれない想いをぶつけられたようだった。
彼は横で眠っているようだ。彼の頬をするりと撫でた。そうしたい気分だった。

 「どうした?」
 「…起きてたの」
 「そりゃあ、君みたいな女性に触れられたら、どんな眠りでもすぐに目覚める」
 「…」

 ずっと起きていたくせに。

 「ちょっと今日は乱暴だったんだけど」
 「…すまない」

 しばしの沈黙、少し目を伏せて彼は言う。

 「…俺が紋章をもってなかったら」
 「あなたは持っている。それは変えられない事実よ」

 それは不毛な、あまりにも不毛なやりとりだった。

 「あなたはどう思ってるのかわからないけど」
 「私はあなたが紋章をもっていようがいなかろうが、こうしていると思う。あなたのことは、結構気に入ってるのよ」
 「はは…ありたいね…本当に」
 「だから、もうちょっと自信持つことをお勧めするわ。まあでも、今日は胸を貸してあげる」

 一糸纏わぬ胸を露わにして言うと彼は、「じゃあお言葉に甘えて」と、私の胸に唇をよせた。