5年ぶりに士官学校時代のクラスメイトが集った。笑い合い、学び合ったクラスメイト達。私にとっては人生で一番楽しいと言えた時間、その時間はもう戻ってくることはないことを、こうして再び相見えることで知る。
 貴族同士ではもしかしたら顔を合わせることもあったのかもしれない。けれども、私は平民で、卒業後傭兵として身一つで各地を放浪していたから、本当に久しぶりだった。
 5年という期間はあまりに長すぎた。
戦乱の中、様々な立場で、様々な人を殺した。家族も先の戦乱で亡くした。ここに集う者も相応の命のやり取り――直接的でなくても…だ――をしてきたのだろうということは、面構えを見ればわかることだった。
 級長――クロードくんも遠い人になっていた。
 盟主となった彼は態度こそそのままであっても、纏う雰囲気や時折見せる表情は私の知っているクロードくんではなかった。彼もまた戦乱の中、盟主として重すぎるものを背負っているのだろう。
 時折彼は遠いところを見つめる。デアドラなのか、はたまたその先のなにかなのかは私には分からない。

 私は彼のことが好きだった。
 今ではまばゆいあのガルグ・マクでの学生時代、私は確かに彼のことが好きだった。私の名前を呼ぶ声、向ける顔、気にかけてくれるその姿。 二人きりで話した、女神の塔。
 彼は野望を果たしたいと言っていた。彼の掲げる野望を果たすにあたっての力になれたら良いと思った。

 「クロードくん」

 そう呼んだらきっと彼は5年前と同じように、でもどこか違うように返してくれるのだろう。

 きっともうこの恋は叶わない。
 5年前に蓋をした感情にもう一度蓋をする。今度はしっかりと。