激闘の果てに、ここ一連の戦乱は同盟軍の勝利という形で終わった。私も、同じクラスだったみんなも、クロードと先生の指揮のもと、獅子奮迅の勢いで戦ったのであった。
 先生とクロードの統治のもと3勢力は1つになっていく。きっと簡単なことではないが、私にはそれが成し遂げられる、そう信じている。有り難いことに私もいち兵士として、フォドラの再建に携わることになっている。
 私は密かに、クロードに想いを寄せていた。平民の私とは立場も何もかもが違うもの同士で、想うことですら許されない立場ではあったのだけれど、それでも日に日に想いは強くなってしまっている。きっと、私とクロードが結ばれることはないだろう、でも、それでも、戦乱の世が終わったのだ、「好きだ」という想いを伝えることを許してもらえないだろうか。私が前を向くために。

 そう思っていたのだけれど。

 「クロード、パルミラに行くの?」

 寝耳に水とはこのことか。否、彼はフォドラを、そしてフォドラの外を変えていく、その意思は私や他のクラスメイトに伝えられてきたことだった。私はその考えが柔軟で、素晴らしいことだと感じていたし、そういうところがクロードの魅力だと感じていたのだけれど、フォドラを出ていくなんて。そんなことは想像もできなかった。

 「ああ、フォドラの統治は先生に任せて、俺には俺にしかできないことをするさ」

 ああ、そうか。彼はいつだって前を向いている。後ろばかり向く私と違って。彼は強い人だった。

 「萌子も頑張れよな。先生はあれでいてちょっと抜けてるところがあるんだ、支えてやってくれ」

 そう笑う彼に私は曖昧に笑うことしかできない。もう、こんなの、想いを伝えられるどころじゃあないじゃないか。あまりにも唐突な失恋だった。それでもと伝えられればよかったのだけれど、私はそんな勇気なんてない。
 でも、彼の成すことを応援したいと思った。彼はきっとうまくやれるだろう。そして、真なる意味で大望を果たせるだろう。それが彼の望みならば私は。

 「クロードがいなくなるとちょっと寂しくなるね。別の国だしね」
 「ちょくちょくフォドラにも顔を見せるさ。俺もみんなに会えなくて寂しくなるしな」

 みんな、ね。彼はどこまでも優しい人だった。

 「本当かなー?でも、応援してるよ。遠くから見てる。私もフォドラで先生と一緒に頑張るからさ」

 うまく言えただろうか。うまく笑えただろうか。あなたがいないフォドラで私もあなたの力になるよ。まだ少し前を向くには時間がかかるけど、きっといつかは前に進めるはず。