「クロードくん、どこにいったんだろう…」

 ある休暇の日、私は恋人であるクロードくんの姿を探すために修道院内を徘徊する。なぜこんなことをしているのかというと、金鹿学級の教室に転がっていた小瓶が発端だった。
 みるからに怪しいその小瓶は、中に透明な液体が入っていた。彼が好む禄でもない薬に違いない、そう思った私は、この小瓶の持ち主でと思われるクロードくんを探しに出かけたのだった。このクラスでこんなことをするのは、クロードくんしかいない。せめて彼女の私がこっそりこれを届けなくては。

 「クロードくん?いる?」

 まずはじめに、クロードくんの部屋に行ってみたけれど、そこは蛻の殻だった。本が散乱している彼の部屋は、彼が意外と勉強熱心であることを示している。そんなクロードくんの意外性が好き…ってそういうことではなくて、彼の場所を探すのよ私。

 次に食堂に行ってみた。ラファエルくんがいつもの調子でたくさんご飯を食べている
 「なまえさんもどうだ?」うーん、お腹は空いているけれど今は我慢。「また一緒にたべよ!」そう手を振って私は食堂を後にする。

 あれからいろいろな場所を行ってみた。大広間、騎士の間、玄関ホール…市場にいるかも、そう思って足を伸ばしたけれど、見つからなかった。

 「クロードくん…どこ…」

 半べそをかきながら、クロードくんを探す。本音を言うと夜の食事のとき、あるいは明日の授業の時にこっそり渡しても問題ない。でも、それでも探しているのは他でもなく、彼に会いたいからだった。

 とぼとぼと歩いていると、大聖堂の近くの広場に辿り着いた。前にクロードくんが「ここはサボるのに最適な場所なんだ」とか言っていたのを思い出した。いるかな。辺りを見回してみるけど、そんな影は見当たらない。

 と思っていたのだけれど。

 「こんなところにいたのか。探したよなまえ」

クロードくんが私の後ろに立っていた。

 「クロードくん!会いたかった…」

 うっすら涙を浮かべながらそう言うと、彼は焦ったように私の顔を覗き込んだ。

 「なまえ、どうしたんだ?」
 「あのね…」

 事の顛末を話した。教室の中で小瓶を見つけたこと。それでいろいろなところを探したこと。でも見つからなかったこと。
 私の頭をくしゃりと撫でて彼は申し訳なさそうに言った。  

 「これは間違いなく俺のものだ。探させてしまってすまない。なまえ、ありがとう」
「どういたしまして。こんな怪しい薬、誰にも見つからなくてよかったよ」

 これは、腹下しの薬だと聞いた。やっぱりクロードくんはちょっと変なところあると思う。

 「ところで、私を探してたっていうのは?」
 「よくぞ聞いてくれましたお嬢様。こちらをどうぞ」

 クロードくんが持っていたのは、私の髪飾りだった。「これを見て私達のことを思い出してね」そういってここに入学する前、母が編んでくれた髪飾りだった。

 「どうしてこれを…」
 「教室でこれを見つけてね。俺もなまえの落とし物を探していたってわけだ」

 私たちは二人で同じことをしていたのか。そう思うと少し笑えてきた。私が笑い声をあげるとつられたように彼も笑った。

 「これ大事なものなんだろ?」
 「そう。私にとって大事なもの。拾ってくれてありがとう。ね、クロードくん。これ、つけて。」
 「承知しましたお嬢様」

 広場のベンチに座りながら、髪飾りをつけてもらう。クロードくんが私の髪に触れるとちょっとどきどきした。

 「できましたよ、お嬢様」

 戯けたように彼はいうと私から体を離す。もうちょっと触れていたいと思うのは、私だけだろうか。彼もそうだといいなと思った。

 「ありがとう。嬉しいな。こうしてつけてもらうの」
 「どういたしまして。しかし、歩き詰めたせいで腹が減ったな。なまえ、食事でもどうだ?」
 「あ、行きたい!ちょうどお腹空いてたんだよね」

 私たちは食堂に向けて足を進める。手つなぎたいな、そう手を伸ばしてみると、彼は察したように私の手をつないでくれた。いたずらっぽい目で笑いかける彼に私はずっとどきどきするんだ。





休日にクロードとほのぼの

瑠璃様リクありがとうございました!