「きりーつ、れい。ありがとうございましたー」

くだらない授業がまた一つ終わった。そして次の授業はそれよりもつまらない。あんなダメ教師がただ熱弁しているだけで寝るしかない授業を受けるくらいなら、もっと良い環境で寝たい。

わたしはお菓子と単語帳、カーディガンなどをスクールバッグにつめ込んで屋上へ向かった。

ぎい、と音を立てて重い扉が開く。目の前にはふわふわとおいしそうな雲が浮かんでいる真っ青の空が広がった。よい秋晴れの日だ。少し涼しい風が本当に心地良い、絶好のお昼寝日和。このままこの空間にずっと居たい、と素直に思った。

こんな時のわたしの特等席は決まっている。わたしは迷うことなく水道タンクの日陰、その場所へと歩みを進めた。するとそこには。

「……」

白くてふわふわの髪の毛をなびかせてうたた寝している少年。あんな髪の毛、一度見たら忘れない。わたしになついている一歳年下の少年、赤木しげるくんだ。

その場に立ち止まってどうしようか悩んでいる間にしげるくんは目を覚ました。わたしの気配を感じたのか、その切れ長のきれいな瞳でわたしの方を見る。

「……ごめん、起こしちゃった」

そう聞こえるか聞こえないかくらいの声でぼそりと言って立ち去ろうとしたわたしの腕を、しげるくんの手がぐいっと掴んで引き止めた。

「沙良せんぱい、でしょ?頭がすごく良くて、先生に反抗的でサボり魔な、美人のひと」

「なんでわざわざそこまで言うの。藤城ですけど」

「こんな所で会えて嬉しいなあ。ねえ、ちょっと話そうよ」

「……仕方ないなあ」

わたしはしげるくんの隣に座ってかばんからクッキーを取り出す。

「あ、おいしそう。ちょーだい」

「えー、わたしが一枚食べてから」

そしてそのまま食べようとしたとき、しげるくんの手がまたわたしの手をぐいっと掴み、ぱくり。

「あ」

「ほら……くれないから」

わたしのクッキーは彼に食べられてしまった。

「なにそれ……もういい、寝る」

わたしはかばんを枕にして、ごろんと横になる。持ってきていたカーディガンを顔にかぶせ、目隠し代わりにした。

「ククク……おやすみ」

そう言いながらしげるくんはわたしの頭をなでていたけれど、わたしはただ寝たふりをしていた。


Sabotage School
(そんなことしたら寝れないじゃない、ばか)