しゃわわわわ……

わたしは一人暮らしをしています。雪の降る寒い冬の夜、リビングでコーヒーを飲んでいました。

ですが、もう一つわたしの部屋から聞こえてくる音。シャワーの水音です。

しゃわわわわ……

「…………」

事の始まりは先ほどのこと。夜中であるのに、わたしの部屋のインターホンが鳴りました。こんな夜中にインターホンを鳴らすひとはひとりしかいません。ドアを開けてみれば、案の定今しがた思い浮かべていたひと。

『泊めてよ、今日』

そういったアカギさんの後ろを見てみれば、外は相変わらず雪。アカギさんのきれいな白い髪は、雪どけのしずくでしんなりと濡れていました。わたしは苦笑いしながらも『どうぞ』と言うしかなかったのです。

そして今は、そんなアカギさんをシャワーに入れているところ。

しゃわわわわ……きゅっ

アカギさんがシャワーを浴び終えたようです。わたしの部屋にはテレビがついていますが、なぜかアカギさんの立てる音ばかりが耳に入ってしまいます。

そうだ、アカギさんの寝るところ。わたしは先ほど述べた通り一人暮らしなので、お布団が二つもありません。どうしよう。わたしがソファで寝ればいいのかな。

そんなことを考えていると、アカギさんが出てきました。こういう時にアカギさんの下着がわたしの家にあるあたり、なんだかなぁと思ってしまいます。だけど、頼ってくれているようで嬉しいのも事実。

タオルで濡れた髪を拭いているアカギさんに、今日の寝るところについて尋ねてみました。ああもう、その濡れた髪の先端から今度はお湯のしずくの粒がきらりとわたしの目に光りました。どうしてこのひとは何をしていても様になって色気があるのでしょうか。

「どこで寝る?わたしソファで寝るから、ベッド使う?」

「え?あぁ、いいよ、大丈夫」

アカギさんはすぐに答えました。わたしは頭に疑問符を浮かべます。

「ん、どうして?どこで寝るの?」

そこでアカギさんはにやりと笑って、わたしの耳元で囁きました。

「沙良と、一緒に寝る」

わたしはびっくりしました。こんな平淡な文章じゃ全くもって足りないくらい、一瞬で顔が真っ赤になっていくのがわかります。

「わ、わたしといっしょに、おふとんで、ですか」

わしゃわしゃと拭いた髪を整えながら、アカギさんはまた答えます。

「ああ」

びっくりするほど透明感のある漆黒の瞳で、アカギさんはわたしを見つめました。なんだか悔しくなって、苦し紛れにわたしは言ってみます。

「別に良いけど……なにかするんですか」

「……だめ?」

そんな顔で言われたら、断れるわけがありません。


スノーシャワー・ナイト