相も変わらず、今日は雪。

学校の休み時間、椅子に座って絶える兆しのないそれをなんともなしにぼうっと眺めていると、右の方から俺を呼ぶ声がした。

「あっ……赤木くん、あ、あの」

左手でついていた頬杖をやめ、顔を声のした方へと向ける。そこにいたのは、あまり話したことのないクラスの女子生徒だった。確か……藤城と言うやつだったか。もじもじと恥ずかしそうにしている。何か言いたいことがありそうな顔だ。素直に言えば良いのに。藤城の後ろにはいつも藤城が仲良くしている二、三人の女子がいる。

「……何?」

そもそも用がなければ俺にわざわざ話しかけなんてしないか。そう思ったもののいつまで経っても用件が聞こえてこなかったので、俺の方から言葉を発した。藤城は俺の声に弾かれたようにびくっと肩を震わせ、意を決したようだがまだおずおずと何かを差し出してきた。

「あ、……その、っと……これ、良かったら……」

そういって藤城が渡してきたものは、綺麗に包装された四角い箱のようなもの。あぁ、そういえば今日はバレンタインデーとか言うやつだったか、と自分の中で納得する。

「あぁ……そ、ありがと」

食べるのかは定かではないが、今にも泣き出しそうな藤城の表情を見ていると、断るのも非情と考えたので受け取っておくことにした。差し出された四角を片手で受け取る。

「あっ……あ、ありが、とう」

「ん」

適当に答えを返すと、藤城は足早に去っていった。藤城の去った先にいた女子生徒たちは、やはり彼女を待っていたようだった。なにやら藤城の肩を叩きながらにこにこと話している。きっと「受け取ってもらえて良かったね、沙良」というようなことを話しているのだろう。

あ……受け取った、ということはつまり、一ヵ月後に何か返さないといけないのだろうか。

面倒くさいなあ、と考えながら、可愛らしい色をしたそれをほとんど何も入っていない鞄へと仕舞った。だがあまり悪い気がしないのは、相手が大人しめの藤城だったからなのであろうか。確かに、いつもきゃあきゃあ騒いでいる女子からチョコレートを貰ったとしても、嬉しくないどころではなく突き返していただろう。なんだ、これではまるで俺が藤城に恋でもしているようではないか。そんな俺らしくない想いを振り払うように、俺はまた左手で頬杖をつき、窓から雪を眺めた。

相も変わらず、雪は降り続いている。

エンドレス・スノウ
(雪のように淡い恋心、眺めるのは雪か君か)