茜色の空、学校の図書室。

僕は勉強しているふりをしながら、棚のところにいる君の姿を見ていた。

手元にある紙をちらちらと見る瞳。まつ毛しか見えないけれど、きっととてもきれいな瞳でそれを見ているんだろうなあと思う。そこまできて僕があの紙に嫉妬していることに気付く。少し恥ずかしい。

そして抱えている何冊かの本を本棚へとしまっていく。ああ、指がきれいだ。今度は本に嫉妬しているのか僕は。全く、だけど君の指がきれいで、愛おしいと思っているのは事実。

そこまで考えたところで君と目が合った。途端に君は顔を赤くし、目を逸らす。その本棚での仕事も終わったようで、足早に去っていく君の姿を見ながら、僕は瞳を閉じて呟いた。

「いとおしいから、見てただけ」

その言葉が君に聞こえたのか聞こえなかったのかは、分からない。

二人と本のいるこの夕焼けの図書室に、僕の言葉がほとりと置かれた。