酒は飲んでも飲まれるな

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目を覚ました途端、吐き気と頭痛に襲われディックはベッドの上で蹲った。

「い、痛っ……!! 頭、痛ッ……!!」

 彼が蹲ったのは赤いビロードに覆われた丸ベッドだ。酒臭い。とても酒臭い。

「なんだ、この部屋……」

 口を開くと胃の中のものがこみ上げそうだ。思わず口を手で覆い、周囲を見回す。ベッドの隣にジャグジーがあった。枕もカーテンも赤。床は黒。広い部屋で、ジャグジーの反対側には大きなソファと大きなテレビが設置されていた。

「なん、だ……この、部屋……」

 もう一度呟いてゆるゆると首を動かし、やっと自分の反対側に視線を落とす。180度動いた視界に飛び込んできたのは姉なのか妹なのか判然としない家族――白井祐未。

 しかも、全裸。

「ふぁっ!?」

 叫んだディックは、そこでもっと悪いことに自分も全裸である事に気がついた。

「う、うわぁ……」

 周囲に散らばるのは丸まったティッシュと使用済みコンドームの山。どう足掻いても致している。しかも何度も致している。

「なんなんだ?」

 頭痛と吐き気に悩まされ、涙目で呟く。ついでに床に落ちた一枚の書類を見て、頭痛とは違う理由で頭を抱えてしまった。

「結婚、証明書……」

 祐未は暢気に寝息を立てている。悲しいことに空調は完璧で、全裸でもまったく肌寒くなかった。思わずベッドに倒れ込む。天井にはなぜか鏡が取り付けられていた。憔悴しきった全裸の自分が映っている。もう一度部屋を見渡し、プレイボーイのシンボルマークを見つけてしまったディックはやっとここがどこなのかを悟った。

「パームスの、スイートじゃないか……!!」

 パームスホテルはラスベガス市の中心部にあるカジノホテルだ。24時間営業のカジノと7軒のレストラン、ナイトクラブを併設し、ボーリングの公式レーンが設置された部屋やバスケットコートのある部屋など、非常にユニークなスイートルームがいくつかある。
 その中でも最高級と言われているのが、ファンタジータワーにあるヒュー・ヘフナーのスカイヴィラ。34階と35階にまたがる二階立て構造で部屋の中央にはエレベーターがついている。
 スカイヴィラの施設でもっとも有名なのは34階のバルコニー全体をつかったジャグジーだろう。柵が透明の強化プラスチックなので、ストリップの夜景を一望できるようになっている。
 お値段一泊約400万。
 とんでもない部屋でとんでもない状況に置かれているようだ。
 もはや考えるのをやめて気絶したいと思いながら、ディックはこの大惨事に至るまでの経緯を必死に思い出していた。
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DANGERHAPPY