花なんていらない
ふたりの絶対条件


講義を終えて一旦家に帰ると、明らかに女物の靴を玄関先で見つけた。目を細め、リビングへと視線を送る。ルームシェアでの三箇条の内の一つ、恋人またはそういった行為をする相手を連れ込まないを破っているのは、一体誰なのか。言わずもがな、時々モデルをして生計を立てているあの男しかいない。そう思いながらリビングへと続く扉を開ければ、大音量でテレビを観ている女と目が合った。

「ーーどちら様ですか」
「いや、それ。こっちのセリフだから」

引き攣る頬を無理やり解す。目の前の女には見覚えがなく、我が物顔で寛ぐ姿に少しだけ苛立ちを覚えた。

「ああ、ここの住人か。この時間帯に帰ってくるってことは、君が大学生の須藤周くん?」
「……そ、う、ですけど。すみません、誰ですか? 満のカノジョかなにかですかね」
「ミチル? ああ。奈良坂満ね。まさか。あんな奴のカノジョな訳ないだろ」
「あ、そうですか……」





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花の冠
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