静寂そのものの空気を纏って、男はそこに立っていた。
 明るい春の日差しの中、古いレンガ造りの建物に伝う植物の影が作った薄暗がりの中に立っている黒づくめの男は纏っている服からなにまで黒一色で、前髪から除く瞳だけがひどくはっきりとした浅葱の色をしていた。

死と乙女

back
top