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距離も手数も向こうの方が多い挙句、主戦力の爆豪くんの個性は爆破。煙で視界が遮られる。でも今敵に背中を向けたら確実に殺される。
だったら少しでも助かる確率が高い方を選ぶ。幸いにも今は私の盾の中にいてくれて敵は盾を破ろうと変形する刀を何度も繰り出してきている。法則性があるとは思えないが爆豪くんの反射神経と焦凍くんのサポートがあれば。

「爆豪くん最大火力で敵正面に向かって爆破できる?」
「ああ!?できんに決まってんだろーが」
「焦凍くんは私を氷で守って!私は爆豪くんを守る」
「一体何を…」

私の考えは敵に最大火力を一発ぶつけ、怯んだところを焦凍くんが追撃し隙を見て撤退だ。その為には爆豪くんに正面から爆破してもらわないと困る。

「行って爆豪くん!!」
「俺に指示してんじゃねぇ!!」

そういいながら両手を爆破させながら敵と距離を詰めるが、そう簡単にいくわけがなく変化する刀が爆豪くんに向かって口から吐かれる。予測不可能の動きだが、爆豪くんに集まるのだけはわかる、だからそれを“盾(シールド)”で弾き接近させる。
そして爆豪くんの最大火力を顔面に浴びさせ、落ちる爆豪くんを回収するために“飛(フライ)”でキャッチし敵の刀をシールドを使い防ぎ、暴れる爆豪くんを間違って落としかけたが無事焦凍くんのところまで回収できた。

「“水(ウォーティー)”…焦凍くん炎を!」

予想通り爆破させた時に散った火の粉が周りの木に付着して燃え広がりそうだったので水で消し、焦凍くんに追撃の炎をと叫ぶと障子くんが必死な顔で私達に向かって走ってきた。

「頼む!…光を!!!」

どういう事なのか聞く前に巨大化したダークシャドウが私達が苦戦している敵を一瞬にして踏みつぶし、まだ暴れたりないとでも言うように動いているモノや近くの木を薙ぎ払っている。

「見境なしか、っし炎を…」
「待てアホ」

見境なしに暴れるダークシャドウを止めようと焦凍くんが炎を出そうとするが、爆豪くんがそれを止めて、戦いたい欲を抑えるような顔で見たいと言った。

「肉…だめだぁぁぁあ、駄目だ駄目だ許せない。その子たちの断面を見るのは僕だぁぁぁ!!!横取りするなぁぁぁ!!」

爆豪くんの攻撃とダークシャドウの攻撃を受けながらも敵は立ち上がりダークシャドウに向けて口を開き刀を吐き出すが、ダークシャドウに握りしめられそのまま投げ飛ばされた。あの威力だと多分もう動けない。これで安心だ。あとは暴れたりないと暴れているダークシャドウを焦凍くんと爆豪くんが落ち着かせるだけだ。

「柚華さん!」
「はいっ!」

焦凍くんから気絶しいている生徒を預かり、2人はそれぞれの個性でダークシャドウを沈める。

「てめぇと俺の相性が残念だぜ」
「俺らがほぼ防戦一方だった相手を一瞬で…」

障子くんの腕が切り落とされたことに怒りでダークシャドウを暴走させてしまった言う常闇くんだったが、結果敵を一瞬で倒せたんだからそこまで誰かに何かを言われることも無く、皆で爆豪くんを守ろうと言いう話に落ち着いた。

「このメンツなら正直…オールマイトだって怖くないんじゃないかな…!」
「なんだこいつら!!!!」
「お前中央歩け」
「俺を守るんじゃねえクソ共!!」

私は列の最後尾についてたまに後ろを確認しながら相澤先生がいる施設に向かって歩き出した。暫く敵と遭遇する事がなく、このままだと無事に相澤先生の所に行けるんじゃ…なんて一瞬の油断が私を後悔させた。

後ろを振り返るとトレンチコートを羽織った奇妙な人が立っていて、声を上げる前に視界が歪んだ。

……爆豪くん…逃げて…!


歪む視界が嫌で閉じていた目を開けるが一面真っ暗で何も見えず、私はなにかカプセルみたいな物の中に入っているんだとわかり、どうにかして出でやろうと鍵になってしまったそれに呪文を唱えるが全く反応がない。となると…為す術もない。

外の音も聞こえないのかと物音を立てずに耳を澄ますと緑谷くんの怒鳴り声が聞こえてきて、外部音だけは聞こえるのだとわかり、外の音に集中する。

「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のものでもねえ。彼は彼自身のものだぞ!エゴイストめ!!」
「返せよ!!」
「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し、それだけじゃないよ。と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」

確かに価値観は千差万別だ。人それぞれ違った価値観があり基準があるが、どれも人に迷惑をかけない範囲の話だ。だから相手を再起不能にしてまで押し付けるようなやり方は理解できない。

「爆豪だけじゃない…常闇や佐倉もいないぞ!」
「わざわざ話しかけてくるたあ…舐めてんな」

焦凍くん…。

「元々エンターテイナーでね悪い癖さ。常闇くんと佐倉ちゃんはアドリブで貰っちゃったよ…ムーンフィッシュ…歯刃の男なアレでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性。彼も良いと判断した!そして佐倉ちゃんの瞬間移動にムーンフィッシュの攻撃を受けても崩れないあの防御力…いいんね欲しくなっちゃったよ」

勝手に貰われても困る。折角帰りたいと思う場所が出来て、傍にいたいという人が出来たんだ。何としてでもここから出て焦凍くんの所に行く。

「この野郎!!貰うなよ!」
「3人とも返してもらうぞ!」

突然轟音が聞こえ、何事かと思いさらに耳を澄ます。

「悪いね俺ぁ逃げ足と欺く事だけが取柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊!目標回収物達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ向かえ!」

幕引きは駄目だ。このまま何もできないでいると爆豪くん諸共連れて行かれてしまう。守らなきゃいけないのに何もできない。外部からの助けを待つしかないなんて悔しすぎる。

「させねえ!!絶対逃がすな!!柚華さん!」

焦凍くんの声が小さいながらも聞こえた。けどさっきよりも遠いし小さい。私達を捕えた男の逃げ足が速くて距離を取られたんだ。このままだと本当に…。

……助けて、焦凍くん!!

「おおおおおおおおお?!」

おお?

声がすると思いきや今度は何かが地面に叩きつけられる轟音がした。何が起こったのかが全くわからない。

「知ってるぜこのガキ共!!誰だ?!」

知らないの?知ってるのどっちなの?!

「Mr.避けろ」
「了解」
「バッカ冷たっ!」

氷系の個性なのか?でもこの声の人知ってると言って知らないと言っていたし信用できないな。

「うが!!!」
「ぎゃあ!!!」

緑谷くんと障子くんの痛みに悶える叫び声が聞こえる。
何が起こっているのかわからないが、2人が今大丈夫じゃないという事だけはわかった。

この中から出たい。出て皆を守りたい!出して!ここから出して!

「死柄木の殺せリストにあった顔だ!そこの地味ボロくんとおまえ!なかったけどな!」
「チッ!!」
「熱っつ!!」

いろんな所から色んな人の声だけが聞こえてきて何が何だかわからない。それにさっきから水音が混ざってて余計に聞き取りずらい。途中までそんな事なかったのに。

「いってて…とんで追ってくるとは!発想がトんでる」
「爆豪は?」
「もちろん」

「2人とも逃げるぞ!!今の行為でハッキリした…!個性はわからんが、さっきお前がさんざん見せびらかした右ポケットに入っていたこれが、常闇・爆豪・佐倉だな!エンターテイナー」
「障子くん!!」
「ホホウ!あの短時間でよく…!さすが6本腕!!まさぐり上手め!」

おかしい。障子くんが私達を回収してくれたのに水音が混じった音しか聞こえない。という事は、今障子くんが持っているのはフェイク…?!

「っしでかした!!」

焦凍くん…!

多分障子くんが手に持っているソレは偽物で、本物の私達は恐らく、考えたくないけど口内にいる。マジックみたいな要領だろう。気づいて欲しいけど、このまま気づかずに施設に逃げた方が焦凍くん達の傷が浅いかもしれない。最悪私達3人が敵に囲まれてもヒーローが来てくれるまで持ちこたえる事が出来そうだ。

「合図から5分経ちました。行きますよ荼毘」
「まて、まだ目標が…」
「ああ…アレはどうやら走り出す程嬉しかったみたいなんでプレゼントしよう。悪い癖だよマジックの基本でねモノを見せびらかす時ってのは………トリックがある時だぜ?」

あぁ、やっぱりそうか。

「氷結攻撃の際にダミーを用意し右ポケットに入れておいた。右手に持っていたモンが右ポケットに入ってんの発見したらそりゃー、嬉しくて走り出すさ」
「くっそ!!!」
「柚華!!」
「そんじゃーお後がよろしいようで……」

連れて行かれる。私はそこでどうすればいいんだ。どうやったら爆豪くんを無事に守りきれる?考えろ。考えるんだ。最適解を考えるんだ!

「哀しいなあ…轟焦凍」

何のことだ?

「確認だ解除しろ」
「っだよ今のレーザー…俺のショーが台無しだ!」

パンと音がしたと思ったら目の前には黒い靄の中に連れて行かれそうな爆豪くんがいて、杖に戻す呪文を唱える隙なんかなく咄嗟に“剣(ソード)”をだし、爆豪くんの首を掴んでいる人に向けて一突きする。

「彼を離して!!」
「っ危ねえなあ…」

爆豪くんの手を掴もうと腕を伸ばすがそれよりも早く爆豪くんの後ろから腕が伸びて掌から火を出した。

「がはっ!“盾(シールド)”!」

爆豪くんにお腹を蹴り飛ばされ、敵との間に少し距離が出来て盾を作り攻撃を防ぐ。

「かっちゃん!!」
「来んなデク」

爆豪くんはそのまま敵に連れて行かれてしまい、緑谷くんの悲痛の叫び声があたりに響いた。

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