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警報音がジリリリと大きな音で控室全体に鳴り響く。

「敵による大規模破壊が発生!!規模は○○市全域。建物崩壊による傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う!」

第2試験が始まる。

この放送が入る前に放送でパイスライダーとしての救助演習を行ってもらうと言っていた。仮免を取得した者としての適切な行動を求められている。
そして今再び控室が展開して、崩壊したフィールドにいる要救助者のプロを助ける為に動き出す。

「1人で多くの命を救い出す事!」

スタートという合図と共に100名全員が動き出し、それぞれがそれぞれの出来ることをしようと、声を出して連携をとっている。

「救助者は控え室に運んでください!仮の救護室をそこに作ります!!」

私も出来ることをしようと声を出すと、その場にいた人がトリアージをやると言ってくれた。

“樹(ウッド)”で仮設救護所の柱と屋根だけ作り、そこに要救護者を入れてもらう。
私も目の前の救える命を救おうと走り出す。すると小さな女の子がお腹から血を流して泣いているのを見つけた。

「大丈夫?!私の声は聞こえる?」
「お腹から血がぁ!!痛いよぉ!!!」

私の顔を泣きながら見る女の子は頭部に怪我がないようで、そこに一安心する。

「私がちゃんと君を助けるよ!お腹以外に痛いところはない?」
「お母さんがいないの!」

私の話を聞かない女の子は大声でお母さんと泣いている。このままではこの子の情報が得られないので、兎に角救護室に向かおうと横抱きにして歩き出す。

「お母さんも必ず私が助ける!だけど今は君の手当が先だから救護室に連れていくね」
「お母さぁん!!おがぁあさんがぁ!!」

泣き叫ぶ女の子の注意を私に向けようと“花(フラワー)”を呼び出して、一輪の花を女の子に渡す。すると女の子はクスッと笑って少しだけ泣き止んでくれた。

「まぁ、あやしかたとしては及第点だ」

あ、要救護者のプロが判断するのか。とそこでこの試験の審査がわかった。何を基準とするのか、どういう採点方式なのか分からなかったが、成程この人達がやれば間近で私達の行動を見ることが出来る上にその場で採点できる。一石二鳥だ。

プロヒーローはまた騒がしく泣き出すので、それを言葉であやしながら救護室に連れて行くと、何人かの生徒がトリアージをしていて、右奥の方にこの子を置いてくるように言われた。

「あれ?緑谷くん」
「佐倉さん!」

知ってる顔を見ると安心する。が、そんな暇もないようで仮設救護所近くの壁が爆音と共に煙を上げながら大爆発をした。

「“盾(シールド)”!!」

咄嗟に仮設救護所を覆うように盾を作り、瓦礫や煙から皆を守ると、緑谷くんが演習だと声を上げた。

本物じゃなくて、演習用の敵って事ね。それにしてもやり過ぎなような気もしなくはないが。
でもそんなこと言ってられない。壊れた壁の向こうから出てきたのは、あの神野事件の時に見たギャングオルカなんだから。

「敵(ヴィラン)が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵(ヴィラン)を制圧しつつ救助を続行してください」

ハードルが高すぎる。だけど皆がいればやれないことは無い!

「緑谷くん行って!ここは私が守るから!」
「佐倉さんの絶対防御壁…わかった!」

必死な顔で救助者を見る緑谷くんに声をかける。きっと彼はここにいる人たちを守る為にこの場に残るか、それとも他の救助者を探しに行くかで迷っているんだと思ったからだ。
緑谷くんは大きく頷いて“盾(シールド)”から飛び出して行く。

敵がこの仮設救護所の前に現れたんだから本当はこの盾を制圧するまで出し続けていたいけど、でもそれだと救助者がこの中に入れない。
だから違うものを盾として使わなきゃいけない。

何がある。どのカードだったら敵から身を守れる?!

“盾(シールド)”を張ってない今、救助者が次々に運ばれて来る。どうしたらこの人達を守れる?!

「皆を避難させろ!奥へ!敵から出来るだけ距離を置け!」
「真堂くん?!」

救助者を抱えながらこちらに向かって緑谷くんの横を真堂くんが走って通過する。

「インターバル1秒の振動でたたみかける!」

真堂くんの個性は確か周りにも影響を及ぼす筈だ。距離があるとはいえ、ここも揺れるかもしれない。

「樹よ、地に根を張り地盤を固めよ“樹(ウッド)”!」

真堂くんの揺れに少しでも耐えれるように“樹(ウッド)”を使う。抉れるように割れる地面に迫ってくるギャングオルカの部下がもたつくが、プロヒーローのギャングオルカには効かないようで、真堂くんはギャングオルカの攻撃に膝をついてしまった。

「真堂くん!」
「この実力差で殿1人…?舐められたものだ…!」

額に手をあて、落胆する声を上げながら話すギャングオルカはやっぱり強い。

「こっちからも敵が来た!」

後から声が聞こえ振り向くと、ギャングオルカの部下が仮設救護所を回り込むように攻めてきていた。

回り込まれたら非常にまずい。

「大地よ、我を守る盾となれ“地(アーシー)”」

地面から土で出来た竜が現れたり、地面を割ったり山を作ったりて部下達の進行を阻み、撤退するように竜が敵をギャングオルカの所まで押している。
すると轟音と共に冷たい空気が頬を掠った。

「皆!」

緑谷くんの言葉に振り返ると焦凍くんをはじめ、尾白くんや三奈ちゃんが応援で来てくれたみたいで、ほっと息を吐く。

「焦凍くん」
「ふぅきぃぃぃ飛べえぇぇぇぇっ!!!」

焦凍くんに声をかけたが、それよりも夜嵐くんの叫び声の方が大きくて掻き消されてしまった。

夜嵐くんの個性は恐らく風、そして焦凍くんは半冷半燃。攻撃力は2人とも飛び抜けて高い筈だ。この2人が協力し合えればギャングオルカを制圧できる。

のに、焦凍くんと夜嵐くんはお互いを視界に入れるとあからさまにムスッと顔を歪ませた。

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