触られたいのは貴方だけ
「テメェら何しやがるっ!!」
殴られた私の上に乗ってる男の人を見て、私の胸をまさぐっていた男の人が私の身体から手を離して、腰に隠していたナイフを取り出し、爆豪さんに向かってそれを振り翳す。それを鼻で笑いながら躱す。距離を取った男の人は両手でナイフを持って爆豪さんに突っ込んでいくが、爆豪さんは相手の手首を取ってそのまま背負投をし、投げ捨てた。
本当に来てくれた…。私の叫び声はあの人に届いたのだと緊張が一気に解ける。
「爆豪…さん」
私がホッとしたのも束の間、爆豪さんは動かない2人を確認しスマホ取り出してどこかに電話をし、怒鳴り散らす。
「いいから来いってんだ!…手柄はてめぇにやるって言ってんだろ!ぐずぐずすんな!」
それだけを言うと通話を終了させたのか、私に大丈夫かと言って自分の着ていた上着をかけてくれた。上手く力が入らなくて上半身しか起き上がらせることしか出来ない。そんな私を見かねた爆豪さんは私を持ち上げた。
「んぁ…っ!」
「は?」
少しの刺激も今は敏感に反応してしまう。背中と膝の裏に手を回されただけなのに、触れられた箇所が熱を持って口から漏れる息が熱い。
声を出さないようにと両手で口を塞ぐも、1度漏れてしまった声は帰っては来ず、爆豪さんの耳にもしっかりと入る。
「なんかされたんか?」
「っ、ンン…薬?って言ってた、けど…」
何の薬かはわからないがこの異変的に予想はつく。爆豪さんも同じ答えに行き着いたのだろう。深く溜息を吐く。
「あの、ありがとうございます」
「椿が無事ならいい……なんて言うかよクソが!!」
帰ったら説教だと怒鳴る爆豪さんの言葉に身体を震わせていると、遠くからおーい。と声が聞こえる。
さっきの電話の相手かな?
赤いつんつんとした髪の男の人が片手を上げながら走り寄ってきて、私の顔を見て目を見開いた。
「爆豪…この子が被害者か?」
「…取り敢えず警察を呼べ。俺達は帰る。後の事は任せた」
爆豪さんは私を持ち上げたまま歩き出し、赤髪の男の人の引き止める声が聞こえたが、爆豪さんはそれを無視してどこかに向かって歩く。
その振動ですら僅かな快感として身体に感じるのだから、最悪だ。
「ばくご、さっ…ン」
「黙ってろ」
「もう、やだぁ…」
自宅との距離はあと少しなのは分かっているのに、爆豪さんから与えられる快楽が欲しくてたまらない。あの日のように私を抱いて欲しい。こんな感情に溺れたくないのに、溺れるしか手段がない。選択肢がない。
それが嫌だ。惨めな自分に涙が勝手に出てくる。
でも、溺れるならこの人がいいの。他の人じゃダメなの。それだけは確かなの。
ぎゅっと爆豪さんの衣服を掴む。爆豪さんは何も反応しないでただ家に向かって歩いていた。
ガチャガチャと鍵を回す音が聞こえ、扉を開けた先の玄関に降ろされる。爆豪さんの腕が肌に触れるだけで熱くなる。
靄のかかった頭で爆豪さんを見つめる。爆豪さんは私を視界に入れないように顔を逸らす。それが寂しくて、手を伸ばして爆豪さんの両頬を私の両手で包む。
こっちを向いて。
近くなった距離を更に詰めて、背伸びをして爆豪さんの唇と自分のソレを重ねる。抵抗はされなかった。それが嬉しい。
「…、ん」
「椿…」
爆豪さんの鮮明な赤の瞳に猛獣が宿る。食べられてしまうんじゃないかと錯覚する口付けが与えられる。
なりふり構わず今私はこの人が欲しいのだ、と強く思う。爆豪さんもそうであってほしい。
「ばく…勝己、さん」
「黙ってろ」
自分の唇を押し付けて、私をそっと床に押し倒す。ひんやりしたフローリングが火照った体に気持ちいい。
離したくなくて勝己さんの頬にあてた手を後に回して抱きしめる。
この熱をなんとかして欲しい。だけどこのまま貴方が欲しい。
なんて言ったらこの人はなんて反応するのだろうか。自信有りげな顔して笑うのだろうか、それとも欲に溺れた顔で私を見つめるのだろうか。
どちらでもいい。この人になら何をされてもいい。
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