結局あの後倒れてしまったらしく、博物館中が大騒ぎになったらしい。
そう話してくれたのは、そもそもの原因である目の前に居るお兄さん、『にっかり青江』であった。

「ということで、よろしく主」
「はぁ……」

起きたばかりで頭が上手く働いていない状態で『にっかり青江』が微笑む。

「お兄さんが言っていることがいまいち分からないんですが……」
「どこがかな?」
「その……主とかいうの……私違いますけど……」

「間宮直緒です」と何を思ったのか自己紹介をしてしまった私に、お兄さんはうんうんと頷く。

「それを言うなら主も違うね。僕はにっかり青江。元は大太刀の大脇差。わかりやすく言えば僕は付喪神みたいなものさ」
「はぁ……」

返事のような吐息のような、曖昧な言葉が漏れ出る。
さっぱりわからない事態にまだ頭が追い付いていないようだ。

「その、にっかり青江さんは……」
「呼びやすい呼び方でいいよ主」
「その、青江さんは何故主と呼ぶんですか?」

「私、主ではないです」と再び主張する。私はお兄さん……青江の主になった覚えは全くないのだと。
私が何度も否定すると青江は考え込み、何かを思いついたのか手を叩いた。

「じゃあ、こうしよう」


「主が嫌なら主代理でどうだろう?」


それ以上は譲れないと青江が言う。
確かに主ではないと言ったが、代理でも無い。

「そもそも主になった覚えすらないのに代理とはこれいかに……」
「これ以上は僕も譲れないよ」

「君は誰が何と言おうと僕の主である」という青江の主張と、「そもそも私が主である意味が分からない」という私の主張はそれからずっと繰り返されお互いに一歩も譲ろうとしなかったが、結局いい加減疲れてきた私が折れる形となった。


憑かれただけに……



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