選手の青年から聞いた学校名を探す。
と言っても女子が集まるコートを目指せば簡単に見つけることが出来た。

「俺様の美技に酔いな」

なるほど、と頷いて元来た道を戻ろうと振り返る。
何がなるほどなのか私にもわからなかったが、なんとなく納得してしまった。多分キャパオーバーしたのだ。
しかし道を引き返そうとする私を阻む何かにぶつかった。
青江である。

「代理」

青江はじっと名言を言った青年を見ている。
美丈夫だと言っていたから何かシンパシーを感じたのだろうか?と私が思ったのを見透かすかのように、青江は「違うよ」と切り捨てた。
スッパリ青江だ。

「あの手に持っているのは?」
「ああ、ラケットですね。アレで球を打ち合うんです」

ふむ、と顎に手を当て考え込む青江。
珍しいその姿に何か良くない事でもあるのかと思ったのを感じたのか、「違うよ」と今度は指で眉間をぐりぐりとされた。また皺が寄っていたらしい。


「代理、アレは付喪神だよ」


ここ最近の馴染み深い言葉である。
さっき聞かれたモノから推測するにテニスラケットの事なのだろう。

「ということは?」
「元凶はアレだねぇ」

元凶と言われたモノ、テニスラケットはイケメン自身の持ち物ではないか。
捕まらないストーカーはそもそも捕まえようがなかったのだ。
なんとまぁ人騒がせな……

「それに、あそこにいるだろう?」
「……どこですか?」

テニスコート内をきょろきょろ見回すが特にこれといって見つからない。
ベンチに座る派手なスーツの男性は監督かコーチだろうし、隣に座るのはきっとマネージャーだ。

「わからないかい?」
「さっぱりですね」

仕方が無いねぇ……とどこか楽しそうな青江。
とても暑いのでさっさと教えて欲しい。


「あそこの派手な男の隣に座ってる女子のことだよ」


派手な男の人の隣というと……

「あの人マネージャーじゃないのか……」

彼女はジャージを着ていた。
付喪神と言ったら歴史的な物に宿るみたいなのを聞いたことがあるから、もっとこう……歴史的重みを感じる服装とか、雰囲気とかあるんじゃないかと思うわけで、そんな「今からスポーツしまーす」みたいなお気軽感を出して欲しくは無かったなぁと思わず遠い目になってしまった。

「じゃあ、あの人をどうにかすれば今回の件は解決するってことですか?」
「そうだね」

今回はクラスメイトに連れられたついでに見に来ただけで、別に助ける義理はないと思っている。
彼を助けたからといって何があるかと言われたら何もない。
感謝もされる事でもないし、そもそも面と向かって「お前のラケット、付喪神になってんぞ」と言ったが最後、病院を勧められるのがオチだ。

「青江さん」
「うん?」
「出番です。あの人?を呼んできてください」

青江は仕方がないと付喪神の所に向かって話しかけた。
付喪神の少女は話しかけられると思っていなかったのか、青江に驚いている。
普通にマネージャーにしか見えない。
よく溶け込んでたものだと感心していると、青江が少女を連れてきた。
私についてくると信じて静かにその場を後にした。

Back