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「そして今はこの博物館に所蔵されているんですよ……!!」手を鳴らして拍手をするお兄さんは隣で突っ立っている私ににこり。
「という事らしいね」
「はぁ……?」
目の前で熱く語った学年主任は満足げに私達生徒を見回した後学芸員さんと話しだした。
この社会科見学は学年主任の独壇場である。
だからきっと私はお兄さんの言葉を聞き間違えたのだと、思いたかった……
「だから、アレが僕の本体だよ」
ピッと指さされたのはガラスの向こう側に展示されている刀、『にっかり青江』だ。
どこからどう見ても展示品の刀で、人間の姿をしている彫刻でもフィギュアでもない。
「いや、似てませんけど?」
「あれ?聞こえなかったのかな?あの刀が僕だよ」
お兄さんが再び同じ言葉を言う。
あの刀がお兄さんであると……
「は?」
「その顔は信じてない顔だね」
まあ、そういうものさ。とあっさり言ったお兄さんに思わず顔を顰める。
ふふっと笑うお兄さんは指で私の眉間をぐりぐりと揉んできてほぐそうとしてくる。
「お兄さんはイケメンだけど不審者なんですか?」
「君は正直者だね。嫌いじゃないよ」
お兄さんの飄々とした態度に元々そんなに機嫌も良くなかったのにだんだんと苛立ちが募っていく。
揶揄うのはやめろと文句を言ってやろうと口を開きかけた時、クラスメイトが私に気づき近寄ってきた。
「なんだ結局見に来たんじゃん」
「まぁ、うん……」
「刀見たくなったの?」
「いや、そういう流れになってしまって……」
お兄さんを見やりながら言うと友人が首を傾げた。
「1人なのに流れも何も無いじゃん」
思わず隣のお兄さんを見上げる。
お兄さんは確かにそこで笑っているのに、こんなにはっきりと見えているのに、見えないはずがない。
口の中が乾く。
いくらなんでも冗談にもほどがある。
「ねえ。私ってずっと一人だった?」
唾を飲み込みクラスメイトに尋ねる。
私の声は掠れ、微かに震えていた。
「何かあったの?大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫……」
「声が震えているね」
お兄さんが私を覗き込む。
さらりと揺れる髪の毛から覗く金色と緋色の瞳に全てを見透かされているようで、
「大丈夫って言っても顔色悪いよ?先生に言う?」
「ぜ、全然大丈夫!!少し休んだら良くなるよ」
「おや?でも今にも倒れてしまいそうだよ?」
お兄さんが私の頬に手を添えてくる。
惹き込まれるように金色と緋色の瞳に視線が釘付けになる。
ああ、これは普通であれば視えてはならない類のものだったのだと、気付いたのは既に憑りつかれた後だった……