彼は影だ。
日の当たる存在の後ろに居る影。
常に一緒に居るが誰もそのことを気にしない、見落とされるような、そんな存在。
そのことを彼は、誰よりも誇りに思っていた。





ライトが煌々と照らす存在を目の前にして、その対象に存在する青年は相棒を慣れた手つきで調律していく。
小さく短く音を鳴らしては確認すること数回。主役の邪魔をしないように素早く終わらせた相棒の調律は今回も完璧だった。
主役のMCに黄色い悲鳴や歓声を上げる観客たちはライトの影に居る彼を見ていない。
そのことを知っているからこそ、彼はそっと目を閉じ、始まる時を静かに待っていた。

MCをしていた主役の空気が変わる。

目を開いて前を見る青年は必ず行う最後の調律の時を待つ。
始まるのを今か今かと待つ観客たちは気付かない。主役が影の存在に一瞬視線を投げかけたのを。その視線を投げかけられた影が小さく頷いたのを。

「Cross my heart……!今ここで、お前らに約束してやる」
「Cross your fingers……!今この場所で、僕らの永遠を誓おう、この歌に乗せて!」

そして今日も彼ら、Crystal Crossと自分を影だと言う青年は音を奏でるのだ。