「一真がビートラップに返ってきたらクリクロの正式メンバーとして迎え入れようと思う」
「は?」
相手が社長であるにも関わらず間抜け面を晒してしまったわけだが、社長である蜂谷はそのことを気にも留めず、寧ろ機嫌良さげに言い切った。
フェアリーエイプリルは元々ビートラップに居た俺の友人である七瀬一真を伴い、どこかの事務所に移籍したのはついこの間の話である。
フェアエプとは関わりは無かったが、後から来たクリスタルクロスを優先して放任されていた(むしろ放置に近かった)のは見るに堪えなかった。だからビートラップから他事務所へ移籍すると聞いた時はその方が良いと思っていた。
しかし、先程社長は一真が戻ってきたらと言った。
そして、聞き捨てならない言葉も聞いた。
「ということは……?」
「お前はクリクロのサポートから外して他バンドのサポートを任せることになるが、お前なら問題ないだろう」
何てことだ。折角最近やっと双子と仲良くやれていたというのに、サポート契約を切られる事になろうとは……
「おいおい、そりゃないぜとっつぁんよぉ……」
「お前は目上の人に馴れ馴れしすぎるところがあるな……」
「俺の目上の方は社長だけです」
「お前からは敬いの心が見当たらんぞ……」
やれやれ、と呆れている社長。そして焦る俺。
「お前たちそんなに仲良くなかったじゃないか」
「人は成長するんです」
「お前に言われると腹立つな……」
「なんとかして下さいよ社長ぉ」
社長の足に縋りつく。社長は嫌そうに見てくるだけで無理やり払いはしない。それを知っているからこそ足にしがみ付く。俺の運命がかかっているのだ。逃がしはしないぞ。
「トライアングルでもいいんでなんとか!なんならタンバリン!」
「ええい鬱陶しい……!お前は何でそんなに双子に執着してるんだ!あと何だそのラインナップは!」
「放せ!」と、そろそろさすがの社長もお怒りになってきはじめたので渋々放すと、社長はフンッ!とこちらを一瞥してきた。反抗する理由を言えということらしい。
「だってクリクロは今売出し中だからサポート報酬高いじゃないですか!!」
「それだけか!?」
「それならくれてやるからさっさと今日の仕事に行け!」と一喝。
俺は喜んで仕事へ向かった。
当たり前だが一真はビートラップには戻って来ず、そのまま俺はクリクロのサポートメンバーとして契約継続となった。
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