「前から思ってたけど、君はソロとかバンドとか組んで活動したりしないの?」
と、言い出したるはクリスタルクロスの双子の兄である結。
俺がバンドを組まず、サポートメンバーとして居続けることを気にしているようだった。
「俺?」
「君以外に誰がいるのさ」
俺より後に入ったクリスタルクロスは後輩にあたるわけで、俺は彼らの先輩。しかし彼らは遠慮なく、というよりは俺を下に見ているようで敬語なんてものは使いもしない。
なんて奴らだとも思うかもしれないが、身長は彼らの方が高いし某有名音楽学校の出身。そしてなによりイケメン。
完全なる敗北。
そう、俺は彼らに勝てる要素が無いのだ。
でも結局は先輩後輩の堅苦しい上下関係よりは今の方が付き合いやすいから気にしていないだけなんだが……
「俺はさ、はぐれメタルなんだよ」
「……何言ってんだお前?」
クリスタルクロスの双子の弟である晶がゴミでも見つけたかのような目で見てくる。
真面目な話は堅苦しくて嫌かと思い、なんとなく分かりやすく言ったつもりがどうやら双子には理解できない言語だったらしい。
俺もそれほど詳しくは無いけど。
あまりにも二人の視線が痛かったので咳払いをして話を戻す。
「今まで言った事無かったと思うけど、てか言ったら二人に契約切られるかもしれないこと言うけどさ……俺、バンドにはいらない存在なんだよね」
俺の告白を聞いて嫌そうな顔をする二人に、今度こそ終わったなと思った。
要するにバンドも組めない余っているだけの男を、社長は完璧な二人のサポートに宛がっているということなのだ。
本当のことだけれども一丁前に傷つきもする。それが俺。
「何言ってんだお前?」
「君がそんな馬鹿だとは思わなかった」
「……だから、サポート契約を切るなら社長に」
「そうじゃねーよ!」
続けて「こんの馬鹿っ!」と声を荒げた晶にびっくりした。
「あのなぁ……馬鹿馬鹿言ってるとな、カバになるぞ」
「小学生みたいなこと言ってんじゃねーよ馬鹿」
「今日から君、馬鹿と改名した方が良いよ。どうしようもない馬鹿みたいだから」
「直接的な晶より遠回しの結の方がきついよな……」
よよよ、と泣く仕草をすると「嘘泣きすんじゃねーよ馬鹿」と罵られた。
馬鹿と言われるショックより馬鹿としか言ってない晶の語彙力の無さに少しばかり心配になったのは内緒だ。
「君さ、組んでたバンドマンに何か言われたの?」
「えー?そこ聞いちゃうの?」
「さっさと言いなよ」
「……『お前の音は型にカッチリとはまっていて、まるで教科書みたいな音だな』ってそのままそっくり言われた。あと……」
『つまらない音』
シンッと静まった室内。
きっとこれで終わりだろう。
さて、次はどこのバンドのサポートに入れられるだろうか……
「良かったな」
「は?」
「そこのバンドから抜けといて良かったね」
「……良かったのかなぁ」
「じゃなきゃ君は今頃音楽辞めてたかもしれないね」
そっかー……と思わず口から漏れた。
そういえば、そうかもしれない。あの時社長に会わなければ、社長にサポートメンバーになればいいと言われなければ、多分俺は音楽を辞めていたかもしれない。
「それに、俺らに使われてるんだ。稔は俺らをありがたくサポートするんだな」
「そうだね。僕たちの音に君の音は余計な雑音がなくてちょうどいいんだ。これからもせいぜい頑張りなよ稔」
二人とは会って数ヶ月。それなのに、俺より俺のことを理解しているような口ぶりに、なんだか俺はくすぐったい気持ちになった。
「ははっ。初めてお前らに名前呼ばれたかもしれない」
「気のせいじゃない?」
「馬鹿は馬鹿で十分だからな」
俺はサポートメンバー。
誰に何を言われても、今俺を認めてくれる人がいる。
俺はそれで十分満足だ。
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