「いやさー、いいんだよ別に。俺はもう仕方がないと思ってるんだからさー」
「その言い方がそう思ってないって言ってるようなもんじゃねーか!」
「二人ともうるさいんだけど……」
青年がもういいのだと言う度に苛立つように言葉を重ねるCrystal Crossの双子の片割れである晶。言い合いというよりは一方的な罵り合いと化してしまっている二人にうんざりしているのがもう一人のCrystal Crossである結。
これが今を時めくビートラップの双子ユニットCrystal Crossと、そのサポートメンバーである青年、織部稔の普段の姿である。
ステージ上で観客から黄色い悲鳴と歓声を浴びている双子と、自分の事を影だと言う青年。あまりにも対照的な二人と一人が一緒に居るのは、結と晶と稔の三人が一緒に行動することでステージ上でのパフォーマンスを最高にする為なのだと言う、事務所の社長の方針であった。
しかし今現在は他の事務所内のミュージシャンたちよりは仲のいい同輩なのだとお互いに思っているからこそよく一緒に居る所を目撃されるし、喧嘩もする。
「大体何に文句あるわけ?」
「あいつがネチネチ言うから腹立ってんだよ!」
「ネチネチなんか言って無いっつーに。俺はもういいって言ってんのに晶がつっかかってくるんじゃんかー」
「はぁあああ!?」
「いい加減にしてくれる?そろそろ僕も怒るよ?」
「サーセン」
「チッ……」
結局毎回間に入る結が脅し……仲裁することで収まる喧嘩。
稔は素直にやめるが晶は納得がいかないと舌打する。
「そもそも何が原因で言い合いなんかしてるわけ?」
「こいつが……」
「晶は黙ってて」
「うっ……」
双子の弟なのに容赦がない。そう稔は二人を間近で見て毎回思っているのだった。
「稔」
「いやまぁ……俺が買ってたシュークリーム、冷蔵庫に入れてたんだけどそれを晶が食っちゃったってさ。俺が名前を書いてなかったから悪いしもういいって言ってんのに何が気に入らないのかヒートアップしちゃって……」
「晶になんて言ったのさ」
「『そのシュークリーム、朝から並んで買ってきた季節限定の一個五百円もするやつだったんだけど、食べちゃったかー。そうか、食べちゃったのかー……』って」
「その言い方が未練がましいって言ってんだよ!」
「もういい」と「そうじゃない」の押収の中、静かに口を開いたのは結だった
「くだらないことで喧嘩するのやめてくれる?」
後に自分たちを見る結はゴミを見るような冷やかな眼差しであったと、晶と稔は語る。
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