自分が特別になりたいと思いだしたのはある男に出会ったことから始まる。

自分は昔から何かを呼び出すことができていた。それがアルケミストになる資格を持つ者が使うことのできる能力であった。その力を使い、自分が呼び出しているモノが何なのかを自分は理解せず、ただただ遊び相手として呼び出し、そして気が付けばいつの間にか消えていた。
だから多くのモノを呼び出した。自分が飽く迄呼び出し、相手をしてもらう。
こどもの自分は寂しさ故にそうしていた。

ある時自分は一人の男を呼び出した。彼は自らを文豪であると言った。
子どもである自分には文豪といわれる存在が何なのか理解ができず、首を傾げながら考えた。その様子を見た男は自分に「文豪とは本を書き記す人の事だ」と分かりやすく教えてくれた。

その文豪がたまに自らの著書を読み聞かせてくれたが子ども故に理解することは難しかったのだろうと思う。自分は文豪が何の本を読み聞かせてくれたのか、ところどころしか覚えていないのだ。そして文豪である彼が誰だったのか、自分は覚えていない。

文豪が自分によく話していたのは「手前は他のものとは違う変人となりたい」という言葉だ。変人になりたいと言う彼に自分が「変なの」と笑うと「何を笑っている」とまるで拗ねたように言う彼に、自分が子どもであるにも関わらず子どもみたいだと思ったことを今でも忘れてなどいない。

その文豪は自分が呼び出した中でも群を抜いて不思議な空気を纏っている人であった。それなのに変人になりたいと言う彼に自分はよく不思議に思ったものだ。これ以上変人になってどうするのか、と。今思えば大変失礼な言葉を言ったものだ。それでも文豪はなんてことのないように言うのだ。「手前はまだまだだな」と……。