参
派遣された帝国図書館の館長と人語を話すネコとの対面を果たし、いよいよ任務を始めることとなった。
文豪を招魂によって呼び出すことを転生と言い、侵蝕者と呼ばれるモノ達を追伐してもらうために文豪を転生するのがアルケミストの仕事だ。言わば自分は彼らを呼び出すためだけの存在と言っても過言ではない。確かに彼らのサポートをするにはするが、侵略者と闘うのは自分ではなく文豪達だ。自分はただそれを見守るだけである。
招魂する為に必要な媒体は洋墨。洋墨は非常に貴重なものだ。どんなに人手が不足しようとも、招魂するための洋墨が無いのであれば、転生させることはできない。だから失敗は許されない。
国から推奨されているのは出来るだけ有名な文豪を転生させることである。誰もが知っている文豪を転生させればその分戦力になると。芥川龍之介、太宰治、宮沢賢治、その他数名の有名な文豪の名前が転生推奨文豪として羅列された文書を自分は早々に破り捨てた。
自分が転生させる文豪はもう既に決めていた。自分の原点とも言える彼。自分が名前を覚えていないのか、そもそも教えてもらってすらないのか……。それすらも分からないが、自分は彼を転生させると決めていた。
誰を転生するのかをアルケミストは決めることはできない。それでも自分は、転生させるのであれば彼が良いと、願っていた。 |