文豪は居ればいるだけ戦力となる。横光を転生させて暫く、洋墨もなかなか集まらなくとも彼だけでは勝てる物も勝てぬと出来る限りは転生させるようにしていたためか、程々に戦力も整ってきていた。
横光は転生した当初、自分に「川端は居るのか?」と聞いてきた。

「ここには利一さんしか居ません」

と言えば、「そうか」と一言返ってきただけであった。口元の襟巻を引っ張り上げて顔半分を隠す仕草をした横光に余程残念なのだろうなぁとぼんやり思ったのが少しばかり懐かしい。

川端を転生することができてから、横光は自分に川端の話をよくするようになった。
横光がよく自分に聞いてきたのは「川端との意思の疎通は可能か?」であった。生前の話は詳しくは知らないが、川端は声が小さい。聞き取ることがなかなか難しい事はあれど意味は通じるので問題ないと横光には言っている。
寧ろ自分は横光の方が時に不思議なことを言っているように思う、と本人に言えば、少しばかり嬉しそうにしていた。喜ぶところではないとは思ったが、彼は変人となりたいのだ。彼にとってはある意味褒め言葉と言うことだろう。

そんな日々を過ごしていく中、横光はある本を片手に本棚の前に突っ立っていた。自分はおや?と思い彼の手元を覗き込むと、横光は自分に持っていた本を寄越してきた。

「これは利一さんの本ですね」
「ああ。あなたに転生される前、これを読み聞かせていたことを思い出したのだ」

曰く、子どもが定期的に横光を転生させては本の読み聞かせを強請ったのだと。その割には自分の用意した本の内容には興味はなく、詰まらなさそうにしていたのだと。少し前までは呼ばれていたのに、一時期からぱったり呼ばれなくなった。それから自分に転生されたと言うことらしい。

「その子供に呼ばれたかったのですか?」

自分が問うと、「そうかもしれないな……」と懐かしいとでも言いたげに横光の顔には微かに笑みが浮かんでいた。