──どうやったって敵うわけないじゃない。
小さく呟いたのは紛れもなく本音だった。

彼女がキラキラと眩いくらいの笑顔で話すのは、学院内では知らぬ人がいないほど有名な人物。
かつての五奇人のリーダーとも言われていた存在。
──朔間零に、彼女は恋をしたらしい。



「でね、今度のUNDEADのライブに誘われたんだけど……」

彼女の笑顔は好きだ。ガールズトークは楽しいし、もちろん恋バナだって何度もしてきた。
それでもどこか、余裕があったんだと思う。
彼女が好きになるのはいつだって手の届かないような相手で……報われることがないのを、知っていたから。
ああ、アタシって本当にヤな奴。
叶わない恋ならいくらでも応援できるのに、初めて彼女の手が届きそうな恋は応援できないなんて。

「嵐ちゃん?聞いてる?」
「あ……、ごめんなさいね、ちょっと考え事しちゃってたわ」
「も〜、こんなこと相談できるの嵐ちゃんだけなんだから、ちゃんと聞いてよ〜!」

彼女がむぅ、と可愛く頬をふくらませる。
アタシのアドバイスで上手くいかなければいいのに、なんて思う悪魔と、彼女の幸せそうな笑顔のためにちゃんとしなきゃ、と思う天使がアタシの中で揺れていた。

- 涙の味を知っているか



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