生憎の雨だった。
少しだけ曇る気持ちを立て直そうと深呼吸をする。
今日はせっかくのデートなんだから、こんな事で落ち込んでいても仕方ない。お気に入りの淡いワンピースの代わりに、少し落ち着いたスカートを選び直す。
白いミュールも今日は履かない方がいいだろうと1からコーディネートを組み直した。
鏡の前でくるりと回る、うん、悪くない。
行ってきますと告げ玄関に出ると、ちょうど隣の家から幼馴染が出てくるのが見えた。

「あれ…、みどりくん?」

呼び止めれば、気だるそうにみどりくんがこちらを見る。
傘をさして外に出れば、みどりくんも同じようにこちらに近づいてきた。

「っス……なんか今日、菜々さん雰囲気違いますね」
「え、そ、そうかな?」
「大人っぽくて別人みたい。……どこか行くんすか」
「ま、まあね。みどりくんは?」
「俺はこれから流星隊のレッスンで呼び出されてるんで……」

雨なのに鬱だ、なんてぼやくみどりくんに苦笑する。不意に、住宅街に似合わない高級車が目の前で停まった。

「え」
「菜々さん!迎えに参りましたよ」

扉が開いて出てきたのは司くんだった。
司くんは優雅な所作で私の前に立つと、みどりくんに話しかける。

「隣のClassの高峯くん、でしたよね。菜々さんとはどう言ったご関係で?」
「えっ、俺のこと知ってるの……?菜々さんとはただの幼馴染だけど」
「そうでしたか。菜々さんはこれから私とDateなのです」

行きましょう菜々さん、なんてわざとらしく私の手をとる司くん。
……もしかして、みどりくんに嫉妬したのかな、なんて考えて少し嬉しくなった。

「みどりくん、レッスン頑張ってね」
「ああ、うん……菜々さんもデート、楽しんで……?」

みどりくんにひらひらと手を振って、司くんのエスコートで車に乗り込む。
車は緩やかなスピードで走り出した。

「菜々さん」
「どうしたの?司くん」
「……なんでも、ありません。司は今日のDateをとても楽しみにしていたのです。雨が降ってしまったのは残念ではありますが、菜々さんと居られるだけでも司は幸せ者です」

今日のFashionも素敵ですねと王子様のように微笑まれて胸がときめく。
司くんもかっこいいよと返せば、司くんは照れたようにはにかんだ。
窓の外では、段々と雨音が強くなっているようだった。



- 雨音



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